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なれはて

(全18ページ中始めから3ページ分表示)

なれはて表紙

 あたくし、昔からひとりぽっちでした。
 いつだって、かなしいくらいに個人でした。
 ごくふつの親たちのまに生まれ、ごく普通の環境で育ってきた筈なのですが、

 特別に輪、もしくは和とやらを、毛嫌いする気が強いわけでもないのです。拒絶反応が目に見えて表れたりもしないのです。
 ただ、気がしおしおとすぼまるのです。
 すぼまると、メダマがじゅわり濡れてきて、あたしニコニコ顔で溶けるのです。塩をまかれたなんちゃらのよに、ねばっと輪郭とけて広がるのです。まわりも溶けるから、互いに覆いかぶさって、平たい体のそこかしこから、ピイピイ声発される気になります。
 あたしは笑って、お友達と別れる時、それこそきりのいいとこでチョン切られて、ぱっと分離せられた気分になります。
 あたしたちは融合したまに、何か捧げあったりもしますので、それらは大抵同じよなものですが、ちょっぴり違いますので、あたくしは人と会うたび微妙に変化します。ちょっとこそばゆくて、もったいない気もありますが、たまに思わぬ拾物もあるので、よしとします。
 でもそれは、お友達や親らがあたしに与えたいであろうものの、周辺部にまっつわりついていたり、又それは時として肝腎のそれとまるきり逆のものだったりするので、与えた彼等にしてみれば、ちょっとむっとなったり、拍子抜けの気分だろうし、そう思うことによってあたしも、勝手に、いつだって人づき合いに、ちょっとした失望を感ぜられてしまうのでした。

 ただかくいうあたくしも、見た目には、到って普通、のんびりした風情の娘でございましたから、もしかすると、どこまでも普通に見えた親らや、お友達の内に、やっぱりあたくしと同じ溶ける習性があったやもしれぬことは、考えたことない訳でないのです。
 でも敢えて確かめて、もし違っていたら、ヘンな人だと、思われるから。あたし赤面して、それこそとりっとめなくだらだら溶け出して終いにはろうのよにして消えてなくなるやもしれぬから、・・・

 あたくしは自分だけが特別変体質だとは思っていなかったということです。そんなことで思い上がったり下がったりする気力がもともとあたくしにはありませんでした。きっとあたくし、生まれた時から疲れ果ててた。ぐったりとして、殺されたニワトリのよに両足束ねて逆さに吊られ、お尻をぶたれてようやっとシクシク泣いた産まれたてのあたしです。
 その誕生秘話は母から幾度も聞かされました。彼女タイヘンだったと言いつつ笑っておりました。あたしは目を細めた母と融合しっつつそれを傍から見た気になったもんです。その気分があたくしの記憶となり、あたしはいつでも逆さ吊りの赤子の情景を思い浮かべることができるのです。…


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