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「絶対的な幸せ」と「相対的な幸せ」~中崎タツヤさんの漫画を読んで

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中崎タツヤさんという漫画家がいます。
著作に『じみへんR』『身から出た鯖a』『問題サラリーMANa』など。
いずれも基本的に1話4、5ページほどの短編ギャグ漫画集です。
作者の奇抜な発想にクスッとさせられたり、脱帽させられたりという話が多いですが、たまに人生について深く考えさせられる話があったりもします。

例えば『問題サラリーMAN』1巻に下記のような話があります。


  • 父母と、小学生と思われる娘が団地の芝生でお弁当を食べ始める。

  • 団地の奥様たちが「何やってんのかしら、あんな所で」と不審な目で見る。

  • 娘は「こんな所で食べるのは恥ずかしい」と言う。

  • お弁当を食べている家族は先月一戸建ての家を買ったばかり。自分たちも以前は賃貸アパートに住んでいた。父は「家を持っている=人生の成功者」だという。そして団地の奥様たちや子供をこきおろし、「ローンはつらいが自分たちはここの人たちに比べたら幸せなのだ。そう思うと弁当もおいしいだろう」と娘に言って聞かす。

  • 弁当を食べ終えて帰宅。家に入ろうとすると、通りがかった車の中から「ママ、見てよ、この辺の家ってすごいよ!」という男の子の声がする。家を褒められたと思い、得意気に振り返る父と母。

  • すると車の中の男の子が「家と家のすきまが全然無いし庭もほとんど無いよ」と言い、その母親らしき女性が「狭い所に上手に作ってあるわね」と答える(車の窓から顔の上半分が覗いているが、その表情は小馬鹿にしているように見える)。

  • 高級車が走り去るのを呆然と見送る家族3人の後ろ姿……

『問題サラリーMAN』1巻 NAKAZAKI【6】


誰かと比べたら自分たちは幸せ」という相対的な幸せは諸刃の剣だということを端的に表した漫画といえそうです。

食べ物の好き嫌いをいったり、ご飯を食べ切れなくて少し残してしまったりした時に、「アフリカの子供たちは食べるものがないんだよ」というような小言をいわれた経験はないでしょうか。私は子供ながらにその言葉がなんとなく腑に落ちなかったものでした。
日本に生まれただけでも幸せなのに」という言葉にも同様の違和感を覚えます。

ある基準において自分たちより下の人がいるのだから幸せ」という考え方では、結局はその基準で上の方にいるとされるひと握りの人たちしか幸せを感じることができません(一生井の中の蛙でいられるなら別ですが)。
人間は、他人と比べる「相対的な幸せ」を追い求めるのではなく、自分が心の底から幸せだと感じられる「絶対的な幸せ」を追い求めた方が精神衛生上よろしいのではないでしょうか。

……とは思うものの、「絶対的な幸せ」とは何かといわれたら、自信をもってハッキリとは答えられません。
それでも自分なりに定義するとしたら、

  • 人に褒められたり、羨ましがられたり、優越感を持つことにより得られる幸せが「相対的な幸せ

  • 人に褒められなくても、羨ましがられなくても、優越感を持たなくても幸せと感じられるのが「絶対的な幸せ

という感じです。

上記でいう所の私の「絶対的な幸せ」は何かと考えてみると、「美味しいものを食べる」「寝る」「面白い映画や漫画を観たり読んだりする」「動物とたわむれる」などでしょうか。
最近描いていないけれど、絵を描いている時も雑念が振り払われて頭がスッキリします。これも私にとっては「絶対的な幸せ」といえるかもしれません。

ちなみに中崎タツヤさんはものを持たないことでも有名です。


もたない男

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断捨離ブームがくるずっと前から、すぐにものを捨てたくなるということを漫画に描いていました(たまにご本人がキャラとして登場します)。
この本ではなぜものを持たないのか、そしてどのようにものを処分してきたのか……ということを書いていらっしゃいます。
本を読むそばから読み終わったページを破って捨てる」「インクが減るごとにボールペンの本体を削っていく」など、数々の衝撃的な捨て方が載っていて驚かされます。

中崎タツヤさんの捨て方はちょっと真似できそうにありませんが、たくさんものを持っているとか、値段が高いものを持っているなどということも「相対的な幸せ」という感じがします。
バブル時代まではそういったことがステイタスになったようですが、今ではそういった価値観は廃れつつある……というか、もう既に廃れているのかもしれません。
資本主義的にはまずいのでしょうが、なるべくものを持たない方が生き方としてはサッパリしていて美しい気がします。

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