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「東海道四谷怪談」を題材にした映画6本+OVA、漫画、浮世絵、本

更新日:
       

葛飾北斎「お岩さん」

東海道四谷怪談」といえば、日本の怪談の代名詞といっても過言ではない怪談話ですが、それだけにこの「東海道四谷怪談」を題材にした映画や漫画がたくさんあります(特に映画……多すぎィ!)。

この記事では、その映画の内の6本と、オリジナルビデオアニメ1本、そして漫画、浮世絵、本を少し紹介させて頂きます。

「東海道四谷怪談」とは

通称「四谷怪談」。
もともとは歌舞伎の演目で、鶴屋南北によって書かれました。

というのが大筋のストーリーです(ひどい話……)。

他の登場人物として、

などがいます。
全員出てくると結構な大人数になるので、上記の登場人物を踏まえて鑑賞すると混乱せずに済むかもしれません。
ただ、映画によっては下男の直助以下の5人は出てこないことがあります。

有名な場面

髪梳き

くしで髪を梳くと、だまされて飲んだ薬のせいでお岩さんの髪が……!
ここがやっぱり一番の見所と思われます。

戸板返し

不義密通(不倫)の汚名を着せられ、戸板の表と裏に磔にされたお岩さんと小平(もしくは宅悦)。
その戸板がどんぶらこ、どんぶらこと伊右衛門の前に流れてきて……!

当時、戸板に釘付けにされた男女の死体が見つかった……2人はどうやら不倫をしていたらしい……というようなニュースが実際にあったらしく、それを南北が物語に取り入れたようです。

小平が登場する場合は小平が「薬をくだされ~」といい、宅悦が磔にされる場合は「金(もしくは銭)をくだされ~」といいます。

提灯抜け、仏壇返し

歌舞伎の仕掛けで、提灯からお岩さんが登場したり、仏壇に人を引き込んだり……というものがあるそうなのですが、これは映画だとほとんど出てきません。
あったとしても提灯にお岩さんの顔が重なる……位の描写です。
舞台でやると面白い仕掛けなのでしょうが、映画だと表現しづらいのかもしれません。

歌舞伎「東海道四谷怪談」のいろいろな仕掛けを人形と模型を使って説明している動画です。

映画

東海道四谷怪談

1959年。カラー。中川信夫監督。新東宝。

数ある「東海道四谷怪談」を基にした映画の中でも、最高傑作の呼び声が高いのがこの中川信夫監督の『東海道四谷怪談』です。

当時、新東宝という映画会社は弱小だったそうで、次に紹介する大映(大会社)の『四谷怪談』に興行的には及ばなかったようです。
しかし後世に語り継がれているのはこちらの『東海道四谷怪談』の方なのですから不思議なものです。

まず導入の義太夫節にグッと引き込まれます。
そして伊右衛門役の天知茂さん、決して大げさな演技ではないのですが、「陰のある色悪(色男だけど悪人)」という雰囲気がムンムンで素敵です。

照明も素晴らしいです。
特に髪梳きの場面の照明は暗すぎず明るすぎずでちょうどいい気がします(暗すぎると何がなんだか分からないし、明るすぎると怖くない+アラが目立つ)。
障子がどぎついオレンジ色に染まる場面も印象的でした。

音楽のヒュードロドロ感、特殊メイク(爛れた感じがものすごくよく出ています)、オープニング後の4分ほどもある長回し、76分とそれほど時間が長くない所もスッキリしていて○。

どれかひとつ観るなら、この中川信夫監督の『東海道四谷怪談』がおすすめです。

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四谷怪談

1959年。カラー。三隅研次監督。大映。

大元の筋は同じなんですが、長谷川一夫さんという当時の大スターが伊右衛門役ということで、伊右衛門が悪役ではない、という所が他の「四谷怪談」との最大の違いです。
小平に嫉妬したりだとか、ちょっとした浮気心を起こしたりだとか、その程度のことはあるのですが、実際の悪事はみな周りの人が勝手にやります。

そしてラストは伊右衛門が仇を討たれるのではなく討つ側になるのですが……う~ん、これがなんだかただのチャンバラっぽくなっちゃっててちょっと興醒め……。
大会社が大スターのために役の性格を変えて作った異色の「四谷怪談」といえそうです。

ちなみに『CURER』や『回路R』などの黒沢清監督は、この四谷怪談を「日本の幽霊が怖い映画」1位に挙げています。

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四谷怪談

1956年。白黒。毛利正樹監督。新東宝。

上の2つより遡ること3年前に新東宝が作った映画。
伊右衛門役は若山富三郎さん(勝新太郎さんのお兄さん)です。

この映画では、伊右衛門の母であり、かつ伊藤お梅の乳母であるお槙が重要な役所を担っています(原作だと伊右衛門の母はお熊といって、お槇[原作ではこちらの漢字]とは全くの別人です)。

このお母さんも若山富三郎さんの伊右衛門も結構ガラが悪いんですよね……。
伊右衛門は色男という設定なのですが、色男というにはちょっと迫力がありすぎるような(若山富三郎さんは男らしくてカッコよくはあるのですが)……。

この映画には珍しく提灯+お岩さん、というシーンがあったのが印象的でした。
それと火の玉がなかなかよく出来ていました(白黒だからアラが目立たないのでしょうか……?)。


四谷怪談

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怪談 お岩の亡霊

1961年。白黒。加藤泰監督。東映。

これも若山富三郎さんが伊右衛門役。上記より更にやさぐれ感が増して、ほとんどヤ○ザ……。容貌は後の「子連れ狼」を彷彿とさせます。

他の「四谷怪談」との際立った違いといえば、直助が伊右衛門を裏切って仇討ちに参加することでしょうか。
それとお梅がちょっとキャピキャピしていて可愛かったです。
お梅は他の映画ではあまり目立たないことが多いのでちょっと珍しいかも(後に出てくる『忠臣蔵外伝 四谷怪談』のお梅はもっと強烈ですが)……。

また、終盤は伊右衛門がノイローゼのようになってしまいます。
中川信夫監督の『東海道四谷怪談』でもちょっとそれらしき描写はあるのですが、この映画の伊右衛門は大がかりな妄想を見たりしてかなりヘロヘロになります。最後にいう台詞も印象深いです。

若山富三郎さん好きなら観てみてもいいかも……。

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四谷怪談 お岩の亡霊

1969年。カラー。森一生監督。大映。

伊右衛門役は佐藤慶さんという俳優です。
この伊右衛門がもう分かりやすいクズ野郎なんです。
具合の悪いお岩さんが、「私が死んでも、当分(奥さんをもらうようなことはしないでしょう?)……」とお願いするように伊右衛門にいうのですが、その返事が、

女房のことか……すぐに持つだろうな!

中川信夫監督の『東海道四谷怪談』でも同じくだりがあるのですが、天知茂さんの伊右衛門は「持ったらどうする……! 世間じゃよくあることだし……」などとちょっとウジウジした感じで答えます。
しかし佐藤慶さんの伊右衛門はキッパリと上の台詞を言い放ちます。その冷たい態度といったら……!
お岩さんに薬を飲ませるにしても、何の躊躇も葛藤もなく、むしろノリノリで自ら実行します。
もうこうなると観ていて清々しいほどのクズなのであります。

直助も分かりやすいクズです。
出てくる人物は多いですが、「善VS悪」の構図がハッキリしているので、頭がゴチャゴチャにならずに済む気がします。
現代的で分かりやすい「四谷怪談」といえるかもしれません。

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忠臣蔵外伝 四谷怪談

1994年。カラー。深作欣二監督。松竹。

原作は確かに「忠臣蔵」と行き来するような面白い構成になっているようで、深作監督はそれを映画でやりたかったということなのでしょうか。
しかし蓋を開けてみたら、かなりトンデモな「四谷怪談」に仕上がったようです。

伊藤家のトリオ(荻野目慶子さんのお梅、石橋蓮司さんの伊藤喜兵衛、渡辺えり子さんのお槇)が怖い……!
高岡早紀さんのお岩さんよりもこの3人の方が怖いかも……特に荻野目慶子さんのイッチャッてる感がすごいです。

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東海道四谷怪談 このうらみはらさでおくべきか…(OVA)

2000年。オリジナルビデオアニメ。平野秀昭監督。

漫画家の日野日出志さんが作画を行っています。
アニメというか、静止画に台詞とナレーションが乗っかっているので、紙芝居のような雰囲気です。BGMもありません。

お岩さんと伊右衛門の声の出演はエンドロールなどでは流れなかったのですが、Amazonなどによると戸川京子さんと京本政樹さんが行っていたようです。

この作品のすごい所は、登場人物を極限まで減らしていることではないかと思います。
下男の小平や、お岩さんの妹のお袖が出てこない映画は他にもありましたが、伊右衛門の相棒とでもいうべき直助が出てこないのはかなり珍しいのではないかと思います。
そのためか時間もコンパクトで(70分)、ホラーな場面に焦点を当てている感じです。

それと、他の映画だと赤ちゃんの存在がウヤムヤになっていることが多いのですが(お岩さんが連れて行くといったり、産後でなく流産した設定に変更しているものもありましたが)、このビデオでは赤ちゃんの顛末も容赦なく描かれています。
それも含めて、他の映画よりもスプラッターな印象が強い「四谷怪談」になっています。
作画は日野日出志さんの真骨頂! ラストも日野日出志さんの漫画風のオチがついてました。


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「四谷怪談」映画まとめ

上ではあまり「怖さ」に関しては触れませんでしたが、それは実をいうと、私がどれを観てもそれほど怖さを感じなかったからなのですよね……。
それでも強いて選ぶなら、やはり中川信夫監督の『東海道四谷怪談』が一番怖いと思います(しかし黒沢清監督のように、三隅研次監督の『四谷怪談』が一番怖いという方もいらっしゃるので……この辺は人によって感じ方が違うので難しい所ですね)。

上でも書きましたが、どれかひとつといわれたらやはり中川信夫監督の『東海道四谷怪談』がおすすめですが、その他オリジナルビデオアニメの『東海道四谷怪談 このうらみはらさでおくべきか…』もよかったです。日野日出志さんの絵がやはり素晴らしいです。
四谷怪談 お岩の亡霊』も佐藤慶さんの悪役ぶりが光っていました。

他にもまだ「四谷怪談」の映画はあるのですが、私はもうお腹いっぱいなので……ご興味がある方はよかったら観てみてください。

漫画

子年のお岩

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お岩さんが子年の生まれというのは設定として実際にあるようで、原作にもネズミがちょくちょく出てきます。それをフィーチャーしたオリジナル漫画。
著者は『同棲時代R』などを手がけた上村一夫さん。
ちょっと艶っぽいですが、怖いところはしっかり怖いです。

ちなみに、映画『東海道四谷怪談』のお岩さんは巳年です。
東海道四谷怪談』や、『東海道四谷怪談 このうらみはらさでおくべきか…』では蛇が効果的に使われていました。

検証 四谷怪談

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これは「四谷怪談」をそのまま漫画化したものではなく、「四谷怪談」は実話だったのか……!? という検証をしている漫画です。
「四谷怪談」の筋を紹介しつつ、作者が霊能者と共にお岩さんが祀られている神社に調査に行った模様などが描かれます。

「四谷怪談」と併せて、日本三大怪談といわれる「番町皿屋敷」「真景累ヶ淵」についての検証も収録されています。

浮世絵

北斎妖怪百景

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錦絵、挿絵、肉筆画など、手法は様々ながら、北斎が描いた「妖怪」や「幽霊」の絵ばかりを集めた画集です。

こちらの「お岩さん」が収録されています。

国芳妖怪百景

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国芳が描いた「妖怪」や「幽霊」の絵ばかりを集めた画集です。上記北斎の本と同じシリーズ。
国芳十八番の武者絵も堪能できます。

「四谷怪談」の絵は以下の3点が収録されています。


国芳「木曽街道六十九次之内 追分 おいは・宅悦」


国芳「東海道四谷怪談」


国芳「神谷伊右エ門於岩のぼうこん」


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日本の古典〈18〉東海道四谷怪談ほか

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原作をだいぶコンパクトにして、現代語訳してくれたものです。
他「浮世風呂」なども同時に収録されています。
浮世絵がたくさん入っているので、パラパラめくっているだけでも楽しいです。

ただ普通の本より少し大きいので、置き場所に困ります。

百鬼夜行の楽園―鶴屋南北の世界

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前半は南北の他の作品にも触れていますが、後半はガッツリ「東海道四谷怪談」の解説になっています。
かなり詳細で専門的なので、上記のものたちをご覧になってみて、ものすごく興味がわいたら読んでみてはいかがでしょうか。

表紙がイカスので、ポストカード代わりに飾ってみるのもいいかもしれません。

       
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