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【八つ墓村など】津山事件(三十人殺し)を題材にした映画、漫画、本、絵

time 更新日:  time 公開日:2016/07/07

津山事件(津山三十人殺し)とは

八つ墓村
映画『八つ墓村』予告編より

昭和13年5月21日、岡山県のある地区で起きた殺人事件。
一晩……それもたった数時間の内に、1人の青年が30人もの人間を惨殺したという史上稀に見る大量殺人事件です。

  • 犯人は都井睦雄(22歳)
  • 犯行時刻は午前1時~3時ごろと推定されている
  • 即死者28名、重傷後死亡2名、重傷1名、軽傷2名。その集落の全人口が111人だったので、4分の1以上の人が殺されたことになる
  • 睦雄は犯行後銃で自殺
  • 当時は軍部による報道規制があり、世間にはあまり知られていなかった(人心をいたずらに刺激すると考えられたため)

睦雄の遺書が3通(自宅の遺書、姉宛ての遺書、自殺現場の遺書)残されており、集落で村八分になっていたことが主な動機ということが判明しましたが、そこに至るまでの経緯に想像力をかき立てられる人が多かったのか、後にいくつもの検証本が出版されました。また映画や漫画などのフィクションにも、この事件に影響を受けているものが多々あります。

犯人・都井睦雄とは

  • 幼くして両親を肺結核で亡くしており、自身も病弱であった。そのため祖母に甘やかされて育った。
    しかし犯行を決意し、復讐が終わったら死んでもいいと思うようになると徐々に丈夫になっていったというから皮肉なものである。犯行時の射撃の腕や足の速さからその超人性に注目する人もいたのだとか。
  • 幼い頃は優秀だったが、祖母が頼んだため中学校へは行けなかった(祖母が睦雄の体を心配したのでは、とか、自分の傍にいてほしかった、金銭的な事情……など、様々な憶測がされている)。
  • 中学校へ行けなかったことや、畑仕事に向いていなかったことなどからだんだん自暴自棄になっていったのか、人妻を含めた村の複数の女と関係を持つようになる(ただ、この地区ではこういったことは特別珍しいことではなかったらしい)。一般的な農村の男と違い、秀才でヤサ男タイプだった睦雄は女性にモテたという。
  • 徴兵検査で丙種(当時男性にとってものすごく屈辱的なことであったらしい)になり、しかもその時に肺結核の診断を受けた。これがきっかけで集落の人々に冷たくされるようになった(関係があった女性たちも含む)。

こういったことが犯行の動機では……といわれています。

被害者

  • 第一の被害者は祖母。就寝中に斧で首を切断された。遺書には「後に残る不憫を考えて」と書いてあった。
  • その後は関係があった女たちを中心に殺害していく。その家族というだけで殺された者もかなりの数に上った。しかし目当ての女性を全部が全部殺せた訳ではなかった。このことについて睦雄は最後の遺書で「うつべきをうたずうたいでもよいものをうった」と述べている。
  • 無差別に殺していた訳ではなく、「お前はわしの悪口は言わんじゃったから、堪えてやるけんの」といって見逃してもらえた者もいた。
  • 睦雄が射撃の練習に精を出すのを見て何かを察したのか、事件が起こる少し前に家族と共に引っ越して難を逃れた女性もいた。

……といったことが事実関係です。
以下で「津山事件(津山三十人殺し)」を題材にした映画、漫画、本、絵をいくつかご紹介します。

映画

八つ墓村

八つ墓村
予告編より

野村芳太郎監督。横溝正史の小説『八つ墓村R』が原作。
寺田辰弥は上司に新聞を見せられ、その尋ね人欄に自分の名前が載っていることを知る。連絡してみるとそこには辰弥の祖父だという人物がいたが、話し始めてすぐに祖父は死んでしまう。
これを機に、辰弥はかつて「八つ墓村」と呼ばれていたという生まれ故郷に赴くことになるのだが……。


物語自体ではなく、物語中で起こった過去のある事件が「津山事件(津山三十人殺し)」をモデルにしたといわれています。上記の画像がその事件の導入シーンです。
山崎努さんが懐中電灯を2本頭におっ立てて鬼の形相で走り寄ってくる……めちゃくちゃ怖いんですが、バックには桜、そして芥川也寸志さんの格調高い音楽がかぶさって、鬼気迫る美しさです。
他にも不気味な落武者の伝説、あやしげな鍾乳洞などが出てきて、かなりホラー色が強いミステリーとなっています。

ちなみに金田一耕肋を演じるのは寅さんで有名な渥美清さんです。
石坂浩二さんの金田一に慣れ親しんでいると違和感がありそうですが、私は渥美清さんの金田一は朴訥としていて悪くない気がしました。

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丑三つの村

田中登監督。西村望『丑三つの村a』が原作。
村人がよそ者を殺すくだりなどはフィクション(のはず)ですが、祖母を毒殺しようとしたことがきっかけで一度銃を押収されたことや、睦雄(この映画では継男)が全くの孤独ではなく少ないながらに友人がいたことなどは事実のようです(後で紹介する本のいくつかにも出てきました)。
昭和の村の閉塞感、人妻たちとのただならぬ関係……秀才だった青年を凶行に駆り立てた経緯を生々しく描いています。

主人公を演じるのは古尾谷雅人さん。『八つ墓村』の山崎努さんに負けず劣らずのとち狂った演技を見せてくれます。

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無惨絵―英名二十八衆句

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事件の内容もさることながら、犯行時の都井睦雄の格好もまた異様です。

  • 黒セルの詰襟服
  • 足には茶褐色のゲートルを巻き、地下足袋をはいている
  • 特製の鉢巻を頭に巻き、懐中電灯を側頭部に1本ずつつけている(前方を照らせるようになっている)
  • 自転車用ナショナル電灯を首から胸に吊り下げている
  • 薬莢入り雑のうを左肩から右腋にかけている
  • 日本刀一振と匕首二口を左腹に差し込んでずれないように革帯で締めている
  • 九連発に改造したブローニング銃を手にしている

当時の雑誌『少年俱楽部』の挿絵がヒントになったのでは……といわれています。

『丑三つの村』でもこの格好は再現されていますが、この画集に載っている花輪和一さんが描く「都井睦雄」も強烈です。
他にも物騒な絵がたくさん載っているのでおすすめです。

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上のものは新版ですが、江戸時代の無残絵がカットされてしまっているそうなので、できれば下の旧版の方がいいかも……。ただ新版にも花輪和一さんの「都井睦雄」は載っていると思います。


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漫画

負の暗示

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山岸凉子著。後に紹介する本『闇に駆ける猟銃』と『犯罪の通路』をもとにした漫画。
短編なのですがものすごくよくまとまっているので、これだけでも事件の概要が大体分かります。
登場人物の心理描写も巧みで、もしかしたら本当に睦雄(この漫画では春雄)はこんな気持ちだったのかも……そしてこのような流れで犯行を決意したのかも……と考えさせられます。

闇に駆ける猟銃

松本清張著。『ミステリーの系譜』という本の内の一編。事件の事実関係を追いつつ、松本清張の見解が所々に入ってきます。
作家のフィルターを通すと浮き彫りになってくることもあるのだな……と思う反面、ちょっと想像をたくましくしすぎでは……? という部分もあります。

しかしある傷口を描写する際の「ザクロのような口になったのである」という表現には、さすがミステリー作家と唸らされるものがありました。
調書には「軟部は挫滅し創縁不正なり云々」と書いてあったそうです。こういわれてもなんだかピンときませんが、「ザクロのような……」という説明がつけ加えられると、途端に図が想像できてゾッとなります。

ちなみに、この本で睦雄の姉のみな子も早逝したと書いてありますがそれは誤りで、みな子は78歳まで生きていたそうです(『津山三十人殺し 最後の真相』より)。

「闇に駆ける猟銃」の他に「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」も収録されています。
「肉鍋を食う女」もちょっと物騒な事件の話です(「二人の真犯人」に出てくる事件は有名らしいのですが、あんまり物騒ではなく社会派っぽい雰囲気でした)。


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犯罪の通路


犯罪の通路

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昭和19年に検事総長になった中野並助さんという方が書いた本。
全部で40個くらいの事件や取調べに関しての小話が収録されています。

津山事件(津山三十人殺し)もその内の一編なのでほんの数ページです。
検事たちが調書を見ながら、睦雄が精神病であったかどうか? などという世間話をした……という話です。
正直他の本を読めば、これは読まなくてもよさそうです。
他の事件についての話も面白いといえば面白いですが、津山事件(津山三十人殺し)目当ての場合はめぼしい情報はあまりないかも……。

津山三十人殺し―村の秀才青年はなぜ凶行に及んだか

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筑波昭著。アマゾンにはノンフィクションという説明書きがありますが、3分の2くらいが事件の記録や関係者の供述、残りが著者の創作+睦雄が書いたという小説がぶつ切りに挿入されるという構成になっています。

睦雄が阿部定事件の影響を受けていたのでは……という部分にビックリしたのですが、これはどうもフィクションのようです。また、睦雄が書いたという小説も著者の創作なのでは……という噂があるようです。

事件のこと以外に、村の習俗として「子おろし唄」という手毬歌があったとか、当時の堕胎の方法、昭和8年に三原山に投身自殺者が相次いだ(1~4月で自殺者60名、未遂者160名)などという記述があって興味深かったです。
しかしこれらは余計といえば余計なので、事件の概要を知るだけなら「闇に駆ける猟銃」の方がよくまとまっているといえるかも……?

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文庫版もありますが、単行本とは少し内容が違うようです。

津山三十人殺し 最後の真相

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石川清著。2011年と比較的新しく出版された本です。なんと事件から73年後のことです。
著者がアメリカにまで赴いて津山三十人殺しに関する極秘資料を読んだ所、ある驚くべき秘密が明らかに……!
そして睦雄に命を狙われながらも生き延びた女性(2010年時点で94歳)にちょこっとインタビューをしたりしています。

上の本や映画、漫画では睦雄と女たちとの関係に焦点を当てていますが、この本では睦雄と祖母の関係に一石を投じています。
著者が憶測を交えて書いたと述べている通り、確かにちょっと考えすぎかな……? という点もありますが、祖母の心境には「あり得るかも……」と思わせられるものが多かったです。

後書き

上記の本や映画を読んだり観たりすると、人間は憎悪を募らせることによりこのような恐ろしい所業ができてしまうものなのか……とゾッとさせられます。
しかも幼い頃は普通……というかむしろ優秀だった人間が大量殺人鬼になってしまったのです。
一歩間違えれば誰もがこのようになる可能性があるのかもしれない……と思うとますます背筋が寒くなります。

いろいろ考えさせられますので、もしよかったら皆様も上記の本や映画を読んだり観たりしてみてはいかがでしょうか。

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