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人間を生み出すことへの恐れ~芳年『奥州安達が原ひとつ家の図』や自分の絵のことなど~

time 更新日:  time 公開日:2016/12/29

どろどろの沼のような不安」という記事で、親に対し「こんなに恐ろしい不幸だらけのこの世に何故自分を産み落としたのだ」という憤りを感じていたのかもしれない、というようなことを書いた(現在ではもうそれほど憤りは感じておらず、親とは厄介な親戚位の距離感で付き合っている)。

だからなのか、割と若い頃からなんとなく子供を生むことへの恐怖があった。その時は漠然とした恐怖であったけれど、自分が感じたのと同様に、子供に「こんな恐ろしい世の中に何故自分を産み落としたのだ」と恨まれる可能性があると思ったのかもしれない。

それに妊婦のあのフォルム……! 蛙のように膨れた腹はグロテスクだし、かつ滑稽でもある。人間の体があのように変化するということがなんだか不気味に感じられた。しかも傍からでは中身が見えない……生まれてみるまで、そこに入っているのは本当に子供なのかどうか分からないという恐怖もある。

また友人の、「妊婦って、おおっぴらに『やりました』っていっているようなもんだよね」という言葉を聞いて、そういえばそうだなと妙に納得したことを覚えている。
学生時代にはあまりよくないとされている行為が、結婚した途端解禁になり奨励されるようになる……。しかし妊娠や出産が純粋におめでたいものであるのならば、学生が子供を生むのだって喜ばれるはずではないのだろうか。

……なんてことを考えていたからかどうかはよく覚えていないのだけれど、私が大人になって「絵を描いてみよう」と思った時に、一番最初に描いた絵が下の絵である。

腹時計
この頃は絵を描く道具を何も持っていなかったので、パソコンのマウスで描いたのだった。

お腹に時計が描いてあるのは、新しい命にも結局タイムリミットがある(いずれ死が訪れる)ということを表したかったのだと思う。

その後も妊婦がモチーフの絵を何枚か描いている。

風呂

妻掻痒

腹輝血
ほおずきが昔堕胎に使われていたと知り思いついた絵。

此所が青春(ぢごく)の一丁目

もしかしたら忘れているだけでもっと描いているかもしれない。
最近描いていないけれど、描きたい絵は結構あって、案だけメモのように書き留めてある。その中にもいくつか妊婦の絵がある。

人間を生み出すことへの恐れが根底にあるので、このような絵を思いついたり、反出生主義的な言葉や、頽廃的な絵などに惹かれるのかもしれない。

反出生主義的な言葉に関しては下の記事をご覧頂くとして、

生まれないのが一番幸せ~反出生主義的な名言集
生まれないのが一番幸せ~反出生主義的な名言集

以下で、妊婦が出てくる印象深い絵、写真、漫画、映画を挙げてみることにする。

芳年『奥州安達が原ひとつ家の図』

私は血みどろの絵師といわれる芳年の絵が好きなのだけれど、その中でも特に好きなのが「奥州安達が原ひとつ家の図」である。

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明治政府により風紀紊乱の絵とみなされて発禁処分になったという絵。鬼婆が妊婦の腹を割いて胎児の肝をとろうと準備している所なのだが、見ようによっては妊婦の方が妖怪の類で成敗されたように見えなくもない。

伊藤晴雨の妻の逆さ吊り写真

芳年の絵に関連する伊藤晴雨という責め絵師のトンデモエピソードがある。上の芳年の絵は実際に女を吊るしてそれをモデルにして描いたのだろうか、それとも芳年が全くの想像で描いたのだろうか……という疑問を持った晴雨は、「そうだ、嫁がちょうど妊娠しているではないか!」と奥さんを逆さ吊りにしてみたのだとか。

伊藤晴雨妊婦逆さ吊り写真

奥さんはこの2日後に無事出産したとのこと。また実際に奥さんを吊るしてみて、恐らく芳年は『奥州安達が原ひとつ家の図』を想像だけで描いたのだろう……という結論に至ったのだとか(『美人乱舞』p.84)。

写真は『発禁本―明治・大正・昭和・平成 (別冊太陽)a』という本に載っています(かなり小さめです)。

写真を撮った時のご本人の思い出話は『美人乱舞―責め絵師 伊藤晴雨頌a』という本に載っています。

丸尾末広『笑う吸血鬼』

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『笑う吸血鬼』という漫画では、ヒロイン留奈が妊娠した姉のお腹を「この吸血鬼!」といって殴るというシーンがある。その後生まれた赤ちゃんをさらう時には「また作ればいいわよ」とケロリと言ってのける。妊活中の方が読んだら目を回してしまいそうな台詞である。

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『屋敷女』


屋敷女

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妊婦受難映画。私はレンタルで観たので一番ショッキングな場面にモザイクがかかっていたのだけれど、セル版はモザイクなしなのだとか……。

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ある程度の年齢になって、自分がどういう人間かということがだんだん分かってくるのは、興味深くもあり、哀しくもある。とりあえず私は自分のためにも子供のためにも子供を生まなくてよかったのだと思いたい。そしてなんだか生まれてきてすみません。