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未DVD化の映画『青春の蹉跌』を鑑賞してきました【ネタバレあり】

time 更新日:  time 公開日:2018/06/03

『青春の蹉跌』ポスター

2018年5月31日、池袋新文芸坐「芹明香パラダイス」という特集で上映された映画『青春の蹉跌』を鑑賞してきました。以下にその映画のあらすじや感想などを書いていこうと思います。

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未DVD化の映画『青春の蹉跌』

私は『和モノ事典』という本で『青春の蹉跌』のことを知りました。

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表紙の池玲子さんがカッコいい……!

1970年代のイカした邦画や邦楽についての本なのですが、これに載っていた『青春の蹉跌』の写真が特に私の琴線に触れました。

『青春の蹉跌』和モノ辞典の写真2
このショーケン(萩原健一さん)、ちょっとセクシーすぎやしませんか……。ショーケンは1970年代若者のカリスマ的存在であったとのことです。

『青春の蹉跌』和モノ辞典の写真1
ショーケンスタイル良すぎィ……! ヒロインは桃井かおりさん。

で、この本を読んだ後にすぐさま『青春の蹉跌』について調べたのですが、レンタルDVDで見つからず……というか、そもそもDVD化すらされていなかったのですね。しかしまァその内DVD化されるだろう――と思いきや、それから数年経った2018年現在でも、『青春の蹉跌』はいまだDVD化されていません。

その『青春の蹉跌』が池袋新文芸坐「芹明香パラダイス」で上映されると知り、芹明香さん好きでもある私には一石二鳥……! という訳で鑑賞してきた次第です。
こういう「幻の作品」的な映画って、期待が膨らみすぎてその期待を裏切られることも間々あるのですが、この『青春の蹉跌』には私は想像していた以上に感情を揺さぶられました。
以下にあらすじや感想を書いていこうと思います。

『青春の蹉跌』あらすじ

賢一郎はアメフトに熱中している大学生。高校生の時には学生運動に身を投じたこともあったが、現在はそういったものからは距離を置いている。

賢一郎は母親ともども、事業家で成金の伯父に金銭的な援助を受けている。生活のことを考えて、賢一郎は司法試験の勉強に本腰を入れることにする。

優秀な賢一郎は司法試験に一発合格する。伯父の娘――賢一郎の従姉妹にあたる康子――は賢一郎のことを憎からず思っているようであるし、伯父はゆくゆくは賢一郎に事業を継がせるつもりであるらしいし、賢一郎の人生は順風満帆なように見えた。

しかしそんな時、賢一郎がアルバイトで家庭教師をしていた娘・登美子が妊娠していることが分かり、登美子と肉体関係を持っていた賢一郎は戦々恐々となる……。

諦観を抱えた主人公・賢一郎

原作小説では「野望を持ってのしあがる」というような人物像らしいのですが、映画の賢一郎はそういったタイプには見えませんでした。

高校生の時には学生運動に参加し、留置場にまで入れられたことが伯父との会話から明らかになります。賢一郎も時々はその頃のことを思い出すことがあるようですが、その熱が甦ってくるということはなさそうです。そんなこともあったなと、懐かしいような、それでいて他人事のような顔をしています。その表情はさながら何十年も昔のことを振り返る老人のようです。

現在はアメフトに熱中し、友人との会話中にも肩や頭をぶつけたりしてイメージトレーニング(?)を行う賢一郎。しかしキャプテンの座は断ったり、司法試験を受ける際にはあっさりと「アメフトはやめる」と口にしたりするなど、芯からは熱くなれない様子が伝わってきます。

恐らく、賢一郎は高校時代学生運動に本気で打ち込んでいたのでしょう。もしかしたら人生で初めて本気で打ち込んだことがその学生運動だったのかもしれません。しかしその学生運動が次第に下火になり――それと共に賢一郎の熱気も段々と冷めていったのではないでしょうか。
いまだに活動を続けていたり、留置場どころか刑務所送りになる人もいたりするものの、自分にはそこまでの主張や熱量はなかった……。

今はアメフトに熱を上げていても、いずれはきっとこの気持ちも冷めてしまうのだろう。あれだけ一所懸命打ち込んだ学生運動すら一生続けることはなかったのだから――という諦観のようなものを抱いているように私には思えました。

司法試験に合格したものの……

賢一郎は司法試験に一発合格しますが、さほど喜んでいるようには見えません。
どうせ何をやっても魂から熱くなるなんてことはこの先ないのだ、それならなるべく社会的にうまく立ち回れる地位に就いた方がいいだろう――というのが司法試験を受けた動機だったのではないでしょうか。

優秀なので「こうした方が有利だろう」ということが簡単にできてしまう。ただそれがしたくてしたくてたまらないことかといえば、そんなことはない

従姉妹の康子に「どうしてアメフトをやめてしまったの」と聞かれて、賢一郎は以下のように答えます。
アメフトやってたって食っていけないからさ

自分の感情に蓋をして、伯父や世間が「こうした方がいい、こうすべきだ」という理想像に自分を当てはめていこうとする賢一郎。生活とはそういうものなんだろうという、ここでも諦観のようなものが伺えます。

登美子との関係

賢一郎は司法試験を受ける少し前から、家庭教師先の娘・登美子と肉体関係を持ちます。
登美子の方から積極的に賢一郎を誘い、賢一郎は据え膳とばかりに登美子を抱く。
およそ熱烈に愛し合っているようには見えませんが、冷えた関係という訳でもなく、2人ではしゃぎ回ったりもするので、仲がいい友達といった雰囲気です。

お嬢様然とした従姉妹・康子より、ちょっと蓮っ葉な登美子といる時の方が賢一郎はイキイキしているように見えました。しかしやはり「結婚するなら、こちらの方がメリットがあるだろう」と康子を選ぶ賢一郎。

登美子が妊娠したことが分かった時も、少しも躊躇することなく「おろせ」の一点張り。できて困るならきちんと避妊しないと……。

気だるげなヒロイン・登美子

登美子はクリーニング店の娘です。父親には後妻がおり、登美子はその後妻を「水商売上がりの女」といって嫌っています。それもそのはずで、後にその後妻はクリーニング店の若い店員とただならぬ関係にあることが判明します。

登美子は賢一郎に積極的に迫るのですが、そこには若い娘にあるはずの恥じらいのようなものはあまり感じられず、どこか投げやりというか、自分を軽く扱っているような雰囲気があります。
あわよくば賢一郎と一緒になって幸せになりたい――しかしなんとなくそうはなれない予感を抱えている。というか、そもそも「幸せな家庭」というものを知らないので、自分が誰かと「幸せな家庭」を築くという図を具体的に想像できなかったのかもしれません。

それでもできてしまった赤ちゃんをおろせなかった登美子。赤ちゃんを切り札にして賢一郎との結婚を――との打算も多少はあったのかもしれませんが、それよりも「女性の本能」的に赤ちゃんを守ろうとしていたのだと思います。

この登美子を演じているのは桃井かおりさんなのですが、演技がうますぎてすごい貫禄なので18~19歳の女の子に見えない……。この時桃井さん自身は22歳だったようなのですが、22歳にも見えない……。デビューから3年くらいということでまだまだ新人さんといってもいい頃なのですが、初々しさは微塵も感じられない……。今にも「桃井はァ~」と言い出しそうな雰囲気。
桃井かおりさんはこの頃から「桃井かおり」としてすっかり出来上がっていたのだなァと感服しました。

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その他の登場人物

小野賢一郎の従兄弟。賢一郎と共に学生運動をしていた過去を持つ。4度目の司法試験に落ち、奥さんと子供2人を連れて故郷に帰る(森本レオさんが演じています)。
三宅賢一郎の友人。三宅も司法試験に一発合格。今日子という女性とつき合い始めたためゲバ棒を持った男たちに襲われて大怪我をする。
今日子クラブ歌手。三宅とつき合い始めるが、元彼である学生運動の幹部(現在は刑務所に入っている)ともまだ会っている。元彼の子供を産んでいる。

など、脇役もみなそれぞれ魅力的です。

小野は伯父に「ゴミのような人生」と評されますが、賢一郎はそれをやんわりと庇います(婚約お披露目のスピーチ時)。
しかしどうも歯切れが悪いのは、小野を庇いつつも、やはり自分はあのようにはなりたくない――という気持ちを持っていたからかもしれません。

三宅は暴漢に襲われて貧乏クジを引いたかに見えましたが、その後回復し、今日子とその子供(自分の子ではない)と暮らし出します。
自分の子供かもしれないのに登美子に冷たく「おろせ」と言い放った賢一郎と、自分と出会う前に他の子供を産んでいる女性をその子供ともども受け容れた三宅。
やはり人間味がある人の方が幸せになれる――ということなんでしょうか。

ラストまでネタバレ

登美子は「子供をおろした」と賢一郎に嘘をつきます。その後子供をおろしていなかったことが発覚しますが、その頃にはもう妊娠5ヶ月になっていて、堕胎はできないと医者にいわれます。

賢一郎と登美子は、2人が初めて結ばれた雪山を再び訪れます。雪山の中で滝を見つける2人。「あそこに落ちたら死んでしまうだろうな」とポツリとつぶやく登美子。
そして唐突に登美子は「一緒に死んで」と賢一郎を掴みながらズルズルと雪山を滑り落ち始めます。必死に抵抗する賢一郎。そこで賢一郎は登美子を殺してしまいます

賢一郎がはじめから登美子を殺すつもりだったのかどうかは分かりません。ただ、2人が初めてその雪山に行った時に、2人は雪の中でカップルの凍死体を発見していました。その時賢一郎は、「女を見捨てれば男の方は助かったかもしれないなァ……いい気なもんだぜ」とつぶやきます。
「いい気なもの」とはなんなのか? ドラマの主人公のように自分に酔った行動をして、死んでしまったら世話ないぜ……というような意味なのでしょうか?

とにかくこの凍死体のことを思い出して、わざと遭難して、登美子を置き去りにできれば……というような気持ちがあったのかもしれません。

しかしやはり自ら行動を起こすようなことはできず、雪山でおんぶしたりされたり、いやらしいことをしたりとただなんとなく時が過ぎていきます。
そこでも先に行動を起こしたのは登美子で、賢一郎を引きずりながら滝に落ちようとします。
賢一郎は子供をおろせなどと冷たいことをいうし、従姉妹の康子と婚約したから別れるなどともいうし、どうやっても今後賢一郎と幸せになれそうにはない――しかも邪魔になった自分は殺されるかもしれない――それならば……という気持ちであったのでしょうか。

賢一郎はどこまでも受け身で、登美子に引きずられながら、恐らく「どうしてこんなに面倒なことになったのか」とでも思っていたのかもしれません。
それでもまだ「生活」に未練はあるようで、そこでとっさに登美子を殺すことに……。本当なら置き去りにしたかったのだと思いますが(倫理的には問題であるが、法律的には問題ない方法)、生命の危険が差し迫っていたので自らの手を汚さざるをえなかったのでしょう。

雪山から1人生還して、康子との婚約を果たす賢一郎。これからは「生活」のために生きるのだ――と好青年の仮面をかぶり如才なく立ち回ります。そんな中、大学生活最後の思い出のためか、賢一郎はやめていたアメフトを再開します。

そのアメフトの試合会場に2人の刑事が現れます。
「体内に残っていた精液はO型だった。ガイシャの血液型はA型で、胎児の血液型はAB型だった。つまり胎児の父親は彼とは別人であると……」
「しかし父親でなくとも、ガイシャの死の直前に一緒にいたのは彼なのだ――」

登美子の赤ちゃんの父親は賢一郎ではなかった……!

休憩中の賢一郎に2人の刑事が近づいてきます。警察手帳を見せられて、全てを察する賢一郎。
しかし賢一郎は何ごともなかったかのようにアメフトの試合に戻っていきます。

「どこに行く」と刑事の内の1人が引きとめようとしますが、もう1人の刑事が首を振ります。
「どこにも逃げられやしないさ――」

何もかもを振り切ろうとするが如く試合に没頭する賢一郎。しかし他の選手ともみ合う内、賢一郎の体からボキリといやな音が鳴ります。賢一郎は目を開いたままピクリとも動かなくなり……死んだのか……失神したのか……という所で映画は終わります。

感想

主人公のしらけた雰囲気が、当時の若者をよく表しているということで話題になったようなのですが、現代の若者が観ても共感できる部分があるかと思います。

生活のためにと、求められている「きちんとした大人像」に自分を当てはめようとする賢一郎。しかし人はパンのみにて生くるものにあらず――。遠い遠い昔のことのように感じられる高校時代、狂乱の学生運動――あの頃のように損得など考えずに、何かに夢中になって生きたい――という願望が、賢一郎の心の奥底でくすぶっていたように思えます。
こういった心情は、いつの時代の若者も――、否、若者に限らずどんな人でも抱いているものかもしれません。

蹉跌」とは、挫折失敗、というような意味を持つ言葉です。賢一郎の「蹉跌」とは一体なんだったのか――。
一番の蹉跌はもちろん登美子を殺したことでしょうが、なぜそんなことをするに至ったのか……。それは彼が自分の感情に蓋をして、「そうすべきである」ことを優先してきたことが原因なのではないでしょうか。

賢一郎の伯父や世間が押しつけてくる「正しい生き方」とでもいうようなものは、伯父さんや世間にとって「都合がいい生き方」なのであって、賢一郎はもう少し自分の生きたいように生きてもよかった気がします。
ただ、刑務所送りになるほどの強い主張があったり、アメフトで絶対に食っていくぞ! というような気概まではないのですよね……。いろいろ考えるのも面倒になってきて、それなら成功者である伯父の言うとおりにしていれば楽かな、といった気持ちがあったのでしょうか。

もう年齢的には結構な大人ながら、大人の皮をかぶって生きているような気がしている未熟な人間(私)にはかなり胸にくるものがある映画でした。

「芹明香パラダイス」について

「芹明香パラダイス」ポスター

2018年5月24日~31日まで、池袋新文芸坐で「芹明香パラダイス」という特集が組まれていました。

芹明香さんは主に1970年代に活動していた女優さんで、特に『(秘)色情めす市場a』のアンニュイな演技が印象的です。

『青春の蹉跌』での芹明香さんの役どころ

その「芹明香パラダイス」で上映されたということは、『青春の蹉跌』にも芹明香さんが出演している訳ですが、時間でいうと本当にわずかです。恐らく2分くらいだったのではないでしょうか。

賢一郎の従姉妹・康子とその男友達が路上で絡まれるという場面があるのですが、その絡んでくる女性が芹明香さんでした。映画館に貼り出されていた情報によると、その役の女性はヒッピーシンナー中毒らしいです。

歩行者天国で芹明香さんが「なァ、お金ちょうだい……100円でええからァ……」とフラフラと男性に近づきます。ひとりの男性に避けられると、また別の男性に同じように声をかけます。
そしてその何人目かにあたったのが康子とその男友達。芹さんは他の男性の時には避けられたら割とすぐに別の男に声をかけたのですが、康子の男友達にはなぜだか執拗にまとわりついてきます。まとわりついてまとわりついて、しまいには男友達の足にすがりついて「100円で……ええからァァァ!」と絶叫します。
それをたまたま見ていた賢一郎が、その場から康子を救い出す……というシーンです。

時間でいうと本当にごくごくわずかなのですが、ものすごい存在感でした。粘りつくような独特の台詞回し。『仁義の墓場a』でも出番は数分でしたが、同様に鮮烈な印象を残しています。

芹明香さんからのメッセージが貼ってあった

「芹明香パラダイス」芹明香さんのメッセージ

映画館に芹明香さんからのメッセージが貼ってありました

本日お越し頂きました皆様とお会いできないこと、

本当に残念に、また申し訳なく思います。

体調を整えていつかお会いできますよう頑張ります。

体調がよくないようで心配ですが、こうやって映画館の方と連絡を取ったりはしているんだと思いなんだかホッとしました(役柄のイメージからか、現在消息不明だとかいったこともありそうな気がしたので……)。

プロフィールを確認した所、1954年生まれということで、2018年現在64歳ですね。きっとかっこよくお年を召されているのではないかと思います。いつか拝見したいものです。

ちなみに、『青春の蹉跌』『(秘)色情めす市場』は両作とも1974年に製作されたそうです。芹明香さんは当時20歳……! 『仁義の墓場』は1975年製作なので21歳。その若さであの堂々たる演技をしていたとは……圧巻です。

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『青春の蹉跌』以外にもイカした映画や音楽がたくさん載っています。

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