「あやしい絵展」……! あやしいもの好きのうらなか書房としては行くしかない……! という訳で行ってまいりました。以下に感想をしたためます。
良かった点
- 国立美術館で「あやしい」くくりの展覧会を行ったこと。画期的なのでは。
- 写真撮影OK(フラッシュ×、一部NGのものもあり)。SNSやブログに載せてもOK(所蔵などを記載要という制約はあるが)。
- グッズが豊富。
ここ数年いろいろありまして、美術展に行くのはものすごく久しぶりだったのですが、今ってこんな感じが当たり前なんでしょうか。国立美術館というと名品展だとか外国の有名どころの美術館展だとかそういった展示をしているイメージだったもので。
写真撮影OKというのも数年前まではあり得なかった気がします。私が浦島太郎状態なんでしょうか。
展覧会の出口では図録やグッズが売っていました。ふせん、マグネット、ハンドタオル、クリアファイル、ポストカードなどなど、どれもいい感じでした。お値段はどれも相場よりちょっと高め。私は図録と、稲垣仲静『猫』のメモクリップを購入しました。
稲垣仲静『猫』メモクリップ
稲垣仲静『猫』(星野画廊)|あやしい絵展
ふてぶてしい表情ながらなんだか憎めない猫です。
イマイチだった点
あやしくない絵が多数含まれている
……これいっちゃうと、企画を根底から覆すようで大変申し訳ないのですが……。私の体感では半分くらいはあやしくない絵でした(これは人により感じ方が違うと思いますが……あくまで私の感想です)。
それもそのはずというのか、図録を読んだ所、
本展では、先に作品がリストアップされて、そこに展覧会タイトルをつけるという順序を採った
「あやしい絵展」図録
と書いてあって納得。で、納得しつつもちょっと腑に落ちない……。展覧会って、まず企画があって、それに沿う絵が集められるのだと思っていたもので……。う~ん、必ずしもそういう訳ではないのですね。
作品のチョイス
芳年や暁斎、国芳だとかの絵はまァあるだろうなと。ただ作品のチョイスが微妙に思えました。芳年であやしいといったら『幽霊之図 うぶめ』
暁斎なら『暁斎楽画 第九号 地獄太夫』
国芳なら『木曽街道六十九次之内 追分 おいは 宅悦』
あたりが展示されるのではと期待していたのですが(国芳は後期で四谷怪談の絵が出るようです)……。
まあ上で述べたように「作品ありき」の展覧会なのでしょうがないですね……。
画家に偏りがある
これも繰り返しになりますが、作品が先にリストアップされたとのことなのでどうしようもないのでしょうが……。
しかし『あやしい絵展』を開催すると決まったのであれば、追加で作品を集めるということはできなかったのでしょうかね。
私なんかだと「あやしい絵」といえば佐伯俊男さんですとか、
米倉斉加年さんだとか
が思いつきます。その他宇野亜喜良さん、金子國義さん、横尾忠則さんなどなど……。
商業的な絵(挿絵や広告など)が弾かれているかというとそういう訳でもない様子(ビアズリーの『サロメ』などは当たり前のようにある)。
画家がご存命だったり、亡くなってからあまり年数が経っていなかったりすると、権利関係云々だとかなんだとかあるのですかね(下衆の勘繰り)。
あと年月を経ると絵にしても文学にしても立派なものに格上げされる風潮があるような。私が挙げた方々は国立近代美術館で展示するにはまだ新しすぎるのでしょうかね。
それと浮世絵だと絵金とかなァ……。絵金祭り以外で絵金の絵を目にしたことはついぞありません。
本物を借りてくるのは無理なのでしょうが、複製だとしても絵金の屏風絵があったらだいぶ迫力が増しただろうなと思います。
絵金についての記事
印象的だった絵
橘小夢『水妖』
橘小夢の絵は素晴らしくあやしいです。しかしそれにしても小夢に頼りすぎなのでは……というくらい展示されていました。『嫉妬』『刺青』『水魔』などなど……。10年くらい前まで全くといっていいほど情報がなかった画家だというのに、近年の取り上げられようは一体なんなんでしょうか。嬉しいですがちょっと怖くもあります。
橘小夢『水妖』(個人蔵)|あやしい絵展
今回特に印象深かった絵は『水妖』ですかね。この絵の下絵を「大正イマジュリィの世界展」で見たのですが、完成した絵を目にしたのは私は今回が初めてかと。艶めかしく異様な迫力がありました。
しかし『押絵と旅する男』は今回は展示されておらず……。またいつかお目にかかりたいものです。
「あやしい絵展」の図録に、「あやしの泉は枯れやすい」という文章が載っていて興味深かったです。数人の画家を挙げ、それらの画家の活動期間中、「あやしい絵を描いていた期間はそれほど長くないという共通点がある」とのこと。
画家だけでなく作家でもあるあるな話だと思いました。江戸川乱歩ですとか。作家だった時代自体が短い尾崎翠や椿實aなど。
ただ橘小夢だけは長いことあやしい絵を描いていた――とあって、これはもう気質なのでしょうかね。『大正イマジュリィの世界』図録には以下のような橘小夢の言葉が載っていました。
荒んだ淋しい世間を離れて、諸国の伝説や物の本に種々相を見い出し、一人幻を描く時、私の魂はよみがえる
『大正イマジュリィの世界』橘小夢の言葉
大正イマジュリィの世界―デザインとイラストレーションのモダーンズ
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田中恭吉『冬蟲夏草』
写真を撮ったのですがブレブレだったので、Amazonで売っているTシャツ画像を載せておきます。
いや、もうこの展覧会で観るまで全く知らない画家だったのですが、いいですねェ、この絵。
花と太陽は力強く光り輝いているのに、人間が暗くず~んと落ち込んでいるのが、なんともいい構図です。
またタイトルも『冬蟲夏草』ですからね。虫じゃなくて蟲ですからね。いわくありげでいいですね。
上でなんだかんだブツブツいいましたけれども、この絵を知ることができただけでも「あやしい絵展」に行った甲斐がありました。
甲斐庄楠音『横櫛』
甲斐庄楠音『横櫛』(京都国立近代美術館)|あやしい絵展
美しい女性がただ立っているだけといえばそうなのですけど、やっぱりこの絵はあやしいですね……。
図録によると、この女性の笑みについて、画家自身が『モナ・リザ』からの影響をほのめかしていたとのこと。いわれてみれば確かに似ていますね。
図録では次ページに同画家が2年後に描いた同名の絵が載っていました。しかしその絵はあまりあやしく感じられないのですよなァ。女性の顔が上の『横櫛』に比べると素朴になっていて、ミステリアスな雰囲気が失われているような。
ちなみに橘小夢も『嫉妬』という絵を2枚描いていて、私は先に描かれた『嫉妬』の方が好きだったりします。
『魔性の女挿絵集a』という本の裏表紙で使用されていた橘小夢『嫉妬』(大正7年版――先に描かれた方)。現在は装丁が変わっているようです。
観たかった絵
私は前期に観に行ったので、後期の絵は観ることができませんでした。
上村松園の『焔』
上村松園『焔』|Wikipedia
岡本神草の『口紅』
岡本神草『口紅』|Wikipedia
は観たかったですなァ。上で書いた田中恭吉の後期の絵も良さそうです。
もう1回行けばいいという話なのですが、遠いので多分行かんです。
番外編:ジョエル=ピーター・ウィトキンの写真
ジョエル=ピーター・ウィトキン『かつて鳥だった女』
「あやしい絵展」は東京国立近代美術館の1階で行われているのですが、「あやしい絵展」のチケットで、2階から4階の展示も観ることができました。
セザンヌや岡本太郎などの絵が飾られていてちょっとおおっとなりました。
2階で行われていた企画展「幻視するレンズ」ではジョエル=ピーター・ウィトキン『かつて鳥だった女』を発見(これも確認した所写真撮影OKでした)。
これあやしいですよなァ。また題名もシャレてますよな。
「あやしい絵展」を観終わって、お時間に余裕があるようでしたら2~4階を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
あとがき
「あやしい絵展」が好評であれば、もしかして第2弾が開催されるかもしれませんね。そうなったらさすがに気合いを入れてあやしい絵ばかりを集めてくれるんじゃないでしょうかね。第2弾に期待します。
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