凄惨な血みどろ屏風絵が路上に飾られるという、何とも妖しく珍しいお祭りがあります。
その名も「絵金祭り」。
この記事では、私がその「絵金祭り」の前夜祭のようなイベント「須留田八幡宮神祭」と、「絵金蔵」という美術館に行った時のレポートを書こうと思います。
「絵金」とは
Web高知−土佐の技−絵金
幕末土佐の町絵師、金蔵の通称。
「異端の鮮血絵師」といわれています。
「絵金祭り」と「須留田八幡宮神祭」
絵金祭り - 絵金蔵 公式ホームページ
「絵金祭り」では、義太夫・歌舞伎を題材とした2枚折りの大きな屏風絵が商店街に立ち並びます。
そして「絵金祭り」には、「須留田八幡宮神祭」(「須留田八幡宮の宵宮」ともいうらしい)という前夜祭のようなイベントがあります。
「須留田八幡宮神祭」
日時 | 毎年7月14日・15日 屏風絵展示は日没より(19時~19時半頃) |
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会場 | 香美郡赤岡町本町商店街 |
展示点数 | 18点 |
「絵金祭り」
日時 | 毎年7月第3土曜・日曜 屏風絵展示は通常19:00より |
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会場 | 赤岡町本町・横町商店街 |
展示点数 | 23点 |
「絵金祭り」と「須留田八幡宮神祭」の違い
絵金祭りが動の祭りとすれば、須留田八幡宮神祭は静の祭り。どちらも商店街に絵金の芝居絵屏風が展示されますが、雰囲気は全く異なります。
賑やかで多くの人が集う絵金祭りに比べ、神祭の方はイベントや屋台はいっさい無し。(中略)
とにかく屏風絵をじっくりと見たい方には神祭の方がおすすめ。屏風絵だけでなく、地歌舞伎やイベントも楽しみたい、という方には絵金祭り。
須留田八幡宮神祭
「絵金祭り」はものすごく混むらしいという噂と、絵をじっくり鑑賞したかったことから、私は「須留田八幡宮神祭」を観にいくことにしました。
「須留田八幡宮神祭」レポート
2005年7月15日に行ってきました。
ろうそくの灯りに照らされた血みどろの屏風絵は迫力満点!
想像以上に妖しく美しいお祭りでした。
赤岡町商店街入口
提灯の灯りが何とも幻想的でありました。
「八百屋お七歌祭文」など屏風絵4枚
こんな感じで屏風絵が路上に飾られています。
カメラマンの方などが結構ウロウロしていました。
商店街の方の話によると、「今年は割に人が居る」とのこと。
それでも「絵金祭り」の比ではないらしい。
屋台なども出て相当賑わうらしく、それはそれで楽しそうですが、ゆっくり絵を見るならばやはり「須留田八幡宮神祭」の方がよさそうです。
ただしこちらでは展示される絵の数が「絵金祭り」よりちょっと少ないです(「絵金祭り」が23点、「須留田八幡宮神祭」が18点)。
しかし一番見たかった絵が飾られていてホッとひと安心。
「花上野誉石碑」
アップで見るとより一層迫力がありました……!
血しぶき……! 絵金のこの鮮烈な赤色は「血赤」と呼ばれているのだとか。
他にも……
「義経千本桜」(一部分)
生首を持っています……!
「伊達競阿国戯場」(一部分)
訳あって醜い容貌になってしまった女性・累……かわいそうな話なのです……。
グッズ売り場がありました
この日は食べ物関係の屋台などは出ていませんでしたが、1つ露店がありまして、そこではいろいろな絵金グッズを売っていました。
観光地ではよくなんでもないものがボッタクリ価格で売られていますが、ここのグッズは小銭入れが400円位、手拭いが1枚300円位と良心的なお値段でした(ので、ついついたくさん買い物してしまいました。。。)。
絵金蔵
赤岡町商店街には、「絵金蔵」という美術館があります。
本物の絵金の屏風絵は年に一度、「絵金祭り」などでしか公開されませんが、この「絵金蔵」で、お祭り以外の時でも屏風絵の複製を鑑賞できます。
展示室が3つありまして、
展示室1「闇と絵金」
ここに屏風絵の複製が飾ってあります。
薄暗い展示室の中に屏風絵が6枚ほどありまして、各々が蝋燭形の灯りにほのかに照らされております。
つまり、ただ単に絵が置いてあるのではなくて、室内が絵金祭の夜のように仕立ててあるのですね。
うっすら聴こえてくるのは三味線の音と、義太夫語りというやつなんでしょうか。それがまたおどろおどろしい雰囲気をより一層高めているように思えます。
入り口で渡されたおもちゃの提灯で屏風絵を照らしながら、じっくりと鑑賞することができます。
展示室2「蔵の穴」
ここでは壁に穴があいていて、本物の屏風絵を覗き見することができます(常時2枚ずつ、定期的に絵は替えるとのこと)。
「絵金祭り」などで公開される時以外は、本物の屏風絵はここに収蔵されているのだそうです。
展示室3「絵金百話」
資料室です。
手回しの年表などがありました。
おもちゃの提灯、壁の穴からの覗き見に続いて、ここでも凝った見せ方をしてくれるなァと敬服致しました。
また、絵金の生涯を短くまとめた映像を鑑賞できるスペースもありました(全部で20分くらい。椅子に座って見ることができます)。
ここにもグッズ売り場があります
この絵金蔵にも絵金グッズがいろいろありまして、ポストカードや画集、ミニ屏風絵などが置いてありました(ミニ屏風絵の絵柄は4種類)。
「蘆屋道満大内鑑」ミニ屏風絵
残念ながら私の好きな絵「花上野誉石碑」のミニ屏風絵はなかったので、説明してくれた方のイチオシである「蘆屋道満大内鑑」のミニ屏風絵を購入しました(ろうそく3本+ろうそく立て付き)。
か、かっちょいい……!
もったいなくて飾れません。うちでも年に1回だけの公開にしようかと思っております。
絵金蔵の方はもちろんですが、商店街の方も、絵金や、絵金の絵についてよくご存知だし、絵に合わせて祭や蔵の雰囲気を作り上げていて、地元の方々が絵金のことを誇りに思っていることが伝わってきました。
赤岡町、とてもイカした町です!
おまけ その他高知について気になること
ごめん・なはり線はスゴイ
赤岡町に行くには、ごめん・なはり線という電車に乗るのですが、後免駅(ごめんえき……駅名もちょっと面白い)で訊ねた所、「3両来るうちの最後尾の1両がごめん・なはり線で、前の2両は別の所に行ってしまう」とのご説明。訊いてなかったら絶対わからなかったと思う……。
後免駅から女性の車掌さん(?)が乗車しています。で、何故か次の駅で降りてしまう。
確かに、乗る時に何だかんだ説明してくれたのだが、役目はそれだけ……? また後免駅に引き返すのだろうか……?
そしてこの電車、支払方法がバスのような感じです。車両の前方に運賃が表示されていて、降りる時に精算箱(?)にお金を入れる。あかおか駅には改札口もないし、駅員さんも居なかったです。
帰りに乗ったごめん・なはり線の車両には、何とデッキがついていました。
ちょっとしたバーみたいのがついてましたが、飛び降りようと思えば全然飛び降りられそう。風もビュンビュン吹いてくるし、たまに電柱や建物にギリギリまで接近します。しかしそんなデンジャラス・ゾーンに平気で子供がいたりしてコレまたビックリ。
でも何だかんだ言いつつ気持ちよかったし、いい景色を満喫できました。
ごめん・なはり線には各駅に何らかのキャラクターが設定されているようです。
あかおか駅なら「あかおか えきんさん」。これはまだ納得がいくのですが、後免駅なんか「ごめん えきお君※」ですよ。「えきお君」って……どこの駅にでも当てはまるのでは……。
しかも駅につく時「後免、後免、ごめん えきお君の後免です」といった感じで、いちいちキャラクター名をアナウンスしてくれます。
赤岡町、絵金好きにはもちろんですが、電車マニアにもオススメの町かもしれません……。
※現在は「ごめん まちこさん」になっていました。
いざなぎ流
「須留田八幡宮神祭」に行った後に知ったのですが、高知には「いざなぎ流」という民間信仰があるそうです。
「いざなぎ流」は陰陽道や修験道、仏教、神道などが混淆した物部村(現在の香美市)独特の信仰なのだとか。
「妖怪ハンターR」の稗田先生のように、民俗学的に研究したら恐ろしい何かが起こりそうな雰囲気があります。
犬神信仰などもあるようですし、高知、興味深い土地です……!
「いざなぎ流」に関する本です。
この本によると、「いざなぎ流」の御幣には200種類以上の切り方があるのだとか……。
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