渋谷区立松涛美術館で行われている「大正イマジュリィの世界展~デザインとイラストレーションのモダーンズ」という展覧会に行ってきました。
お目当ては橘小夢の絵。
第一部「大正イマジュリィの十三人」という展示に橘小夢が含まれていることに少し驚かされました。夢二、華宵などはまあ入って当たり前かと思いますが……。その他有名な画家なども交ざっていて、選び方が面白かったです。
橘小夢では、
「嫉妬」
「水魔」
その他「刺青」(谷崎潤一郎の小説にインスパイアされたのだとか)、それと未発表絵の下描きだという「水妖」などがよかったです。
しかしいつかもう一度「押絵と旅する男」の絵を生で見たいものです……。
橘小夢「押絵と旅する男」……「大乱歩展」で展示されていました。
橘小夢以外では、竹中英太郎の絵が印象に残っています。以前にも乱歩の小説の挿絵などで目にしているはずなのですが、生で見て「こんな絵だったかしら」と驚きを禁じ得ませんでした。何というか、こんなにヌメッとした画風であったかなァと……。
新たな発見でありました。
その他もう全体的にいい感じでした。本の手作り感やマッチラベルのモダーンなデザインにうっとり……。
本などに限らず、現代の製品が概ね味もそっけもなく思えるのは、私の感覚が少々偏っているからなのでしょうか。否、否、その所為ばかりとは言い切れないと思います。
大正イマジュリィが今後復活して定番になってくれることを願って止みません。
「大正イマジュリィの世界展」図録
図録にはまだ一部しか目を通せていないのですが、最初の方の解説で「明治の欧米至上主義への反発(でも全否定ではない)」「キッチュ(まがい物的)な表現をもった文化だった」などという考察がされていてなるほどという感じでした。
「エラン・ヴィタル=生の飛躍」なんていう言葉も粋です。
図録は展覧会場でなくともネット書店などで入手できるようなので、遠方の方は図録をじっくり読み込んでみてはいかがでしょうか。
図録の橘小夢のページにはこんな言葉がありました。
「荒んだ淋しい世間を離れて、諸国の伝説や物の本に種々相を見い出し、一人幻を描く時、私の魂はよみがえる」
『大正イマジュリィの世界』橘小夢の言葉
いつの世にもどんな時代にも、何となく自分を世間のはみ出し者のように感じてしまう人がいるものなのだなァと……。というか、割とそういう人って多いものなのでしょうか。少なくとも私はそうだったりします。
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