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【スプラッターの始祖】ハーシェル・ゴードン・ルイス監督の映画 6作品【『2000人の狂人』等】

time 更新日:  time 公開日:2016/10/12

ハーシェル・ゴードン・ルイス監督とは

2000人の狂人

出典:IMDb

1960年代に世界で初めて内臓が露出する映画を撮ったことから、「スプラッター映画の始祖」「ゴッドファーザー・オブ・ゴア」といわれている映画監督です。

この記事では、そのルイス監督の比較的鑑賞しやすい(※)映画6作品と、ルイス監督についてのドキュメンタリー映画をご紹介します。

※DVD化されていて入手が容易であったり、レンタルで取り扱いがあったりという物理的な意味での鑑賞のしやすさです。内容はどれもかなりえげつないのでご注意ください。

血の三部作(1960年代の作品)

『血の祝祭日』

世界初のスプラッタームービー

ある町で、女性ばかりを狙った猟奇的な殺人事件がたて続けに起こり……。


1963年製作。世界初のスプラッタームービーといわれています。
世界初だから名前が残っているだけで、古い映画だし、チョロッと血が出る程度なんじゃないの……? などと思ったら大間違い! 目玉をえぐる足を切断する脳みそをぶちまける舌を引っこ抜く……などなど、かなりエグいショックシーンが出てきます。

以下の映画にもいえることですが、内臓は本物(動物のですが)を使っているようなので大変リアルです(当然といえば当然ですが……)。
しかし血がマッカッカだったり、死体のマネキン感を一切隠そうとしなかったりという所にB級臭が漂っています。そのリアルとインチキくささの落差がルイス監督の映画の魅力です。

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『2000人の狂人』

ヒ~ハ~! 青空の下で行われる陽気な殺人ショー!

6人の男女がある田舎町に誘導され、町民たちに熱狂的に迎え入れられた。その町ではお祭りを行っていて、6人は是非滞在してほしいと頼まれるのだが……。


1964年製作。興行的には『血の祝祭日』に及ばなかったようですが、この映画がルイス監督の代表作ではないかと思います(後に出てくるドキュメンタリーで、監督自身も最も好きな作品と仰っていました)。

青空の下で様々な残虐行為が繰り広げられるのですが(チョン切る裂く転がすなど)、それがまァ大変楽しそうなのです。
一歩間違うとコメディになってしまいそうなのですが、一種異様な雰囲気があって、それがなんだか恐ろしい。だけどやっぱり面白い。

あとから考えると、あれが群集心理の恐ろしさというものだろうか……などとも思えてくるのですが、そこに主眼が置かれていないからか、後味はさほど悪くありません。ではどこに主眼が置かれているかといえば、もちろん真っ昼間っからの殺人ショーです。しかしそれもなんだかファンタジーのようで……。鑑賞後はまるで白昼夢を見たような気分でした(実際見たことはないですが)。

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『カラー・ミー・ブラッド・レッド』

芸術のために、人の血を絵の具に……!

1965年製作。画家のアダム・ソーグは、彼をけなした評論家を見返すために傑作を描こうと苦心している。ある日アダムは、キャンバスに恋人が怪我をした時の血がついていることに気付き……。


スプラッターやグロは他の作品に比べると控えめですが、乳搾りをするかのように内臓から血を採取するシーンが印象的(ドキュメンタリーで、フランク・ヘネンロッター監督が「とても機能的だ」などと言っていましたが……機能的……確かに……)。
また血を使って描いた絵が恐ろしくイカシています。
監督自身が描いたのではないと思いますが、アイデアは監督が出したのかもしれません。
『2000人の狂人』のテーマ曲もご自身で作ったとのことですし(歌も歌っていたとか)、多才な方だったのだと思います。

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1970年代の作品

『血の魔術師』

相変わらずの血みどろ!

魔術師が舞台上で、美女を残酷な方法で殺害するというショーを行っている。美女はショーが終わると元通りの体になっているのだが、その数時間後、舞台上で殺された時と同じ死に方をして……。


1970年製作。上記初期の「血の三部作(血まみれ三部作などともいうようです)」から少し間が空いています(といっても、この間にもルイス監督はいろいろと映画を撮っていたのですが、現在日本では観ることが難しいようです)。

『カラー・ミー・ブラッド・レッド』で残酷描写が少し控えめになっていましたが、本作はスプラッターシーンが満載
最後までよく分からない謎があるので、ホラー映画にもきちんとした整合性を求める方にはおすすめできませんが、バラエティに富んだ魔術(に見せかけた殺害方法)が見所です。

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『ゴア・ゴア・ガールズ』

やりすぎのゴア描写はもはやギャグ

私立探偵と女性記者のコンビが、ストリッパーばかりを狙った連続殺人事件の謎を追う。


1972年製作。魔術や幽霊などファンタジックな要素がなく、現実でも起こり得そうな連続殺人を描いています。また、その殺害方法をじっくりと映す所や、犯人が黒尽くめ・黒手袋の所などから、ジャッロ(その頃のイタリアのホラー)に通ずる雰囲気を感じました。
しかしジャッロほどシリアスかというとそうでもなく……。ゴア描写は凄まじいのですが、犯人が意味不明な行動を取ることがあり、それがギャグにしか見えない……。
お色気もあります(といってもいろんな女性が脱ぎまくるだけですが)。この時はルイス監督はこの映画を引退作にするつもりだったようなので、やりたい放題やったのだと思います。

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2000年代の作品

『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』

ルイス監督30年ぶりの復帰作

世界初のスプラッター映画『血の祝祭日』の続編。ある町に料理人が引っ越してきた。その料理人は、以前その町で起きた連続殺人犯の孫で……。


『ゴア・ゴア・ガールズ』で一旦映画業から退いていたルイス監督ですが、2002年、30年ぶりに本作で映画界に復活を果たしました(その間は広告業界で活躍していたようです)。

『血の祝祭日』の犯人・刑事の孫が出てきます。残虐描写はこの記事で紹介している映画の中で一番激しいかもしれません。しかし2000年代といえどもグチャドロシーンにCGが使われておらず、手作り感があふれているのが素晴らしいです。

ちょっと残念なのは、そういった場面以外がほとんどコメディなことかと……。
ルイス監督の上記の映画たちは、どれもスプラッターでありながら悲愴な感じがなくあっけらかんとしているので、恐らく監督がネアカな方なのでしょう。『ゴア・ゴア・ガールズ』と今作でそれを強く感じました(『2000人の狂人』を観た時から薄々そうかなとは思っていましたが……)。
ひたすら残虐で重い映画もちょっとご勘弁なのですが、あまりコメディ寄りになってしまってもなァ……という。その絶妙のバランスがとれていたのが私にとっては『2000人の狂人』なのだろうと思います。

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ジャケットは怖そうなのですが……内容はだいぶコメディ寄りです。

ドキュメンタリー

『ゴッドファーザー・オブ・ゴア』

ハーシェル・ゴードン・ルイス監督についてのドキュメンタリー映画

「ゴッドファーザー・オブ・ゴア」として、一部のホラーファンに愛されているハーシェル・ゴードン・ルイス監督についてのドキュメンタリー映画。
監督は『バスケットケースR』などのフランク・ヘネンロッター。
ルイス監督が自らの映画人生を振り返ると共に当時のロケ地を再訪したり、俳優やプロデューサーが製作時のエピソードを語ったりしています。

また、ルイス監督のファンであるジョン・ウォーターズ(『ピンク・フラミンゴa』の監督)もちょこちょこ登場します。マリファナでトリップしながらドライブインで大騒ぎして『血の祝祭日』を観てたよねェ……などというぶっ飛んだ思い出を懐かしそうに語っていました。
上記の映画を観て、ルイス監督のファンになった方は観てみてもいいかもしれません。

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あとがき

上記の内でどれかひとつといわれたら『2000人の狂人』がおすすめです。まずはこれを鑑賞してみて、ハマッたら他の映画もご覧になってみてはいかがでしょうか。

また、2016年9月26日にハーシェル・ゴードン・ルイス監督がお亡くなりになったとのことです。
ご冥福をお祈りいたします。