今回の記事で紹介する『RAW~少女のめざめ~』はフランス発のホラー映画です。
フランスのホラー映画というと、以前「スプラッター! だけど精神的にも怖いフランスのホラー映画」という記事で紹介した『マーターズa』や『屋敷女R』などが凶悪すぎて、いまだに「またああいう映画を作ってくれないかな……」とつい期待してしまう所があります。
そして『RAW~少女のめざめ~』に関してなのですが……、
あまりのグロテスクさに、世界各地で開催された映画祭では失神者や吐き気を催す観客が続出したとも言われており
Real Sound 映画部
などと書いてあるのを色々な所で目にしたので、半分「ホントかなァ」と思いつつ、でももしかしたらフランスのホラー映画だし……レイティングR15だし……ということで、映画館で鑑賞してみることにしました。
結論からいうと、上の宣伝文句(?)ははっきりいって大げさです。ド直球のスプラッターやグロを期待すると肩透かしを食うこと請け合いです。全く怖くもありません。
ただなんだかとても「奇妙な味」がある映画ではありました。同じフランスのホラー映画であれば、ゴリゴリのスプラッターである『ハイテンションa』や『屋敷女』よりも、変り種のホラー『変態村a』に近い印象を受けました。
以下で『RAW~少女のめざめ~』のあらすじ、感想、ネタバレを書いていこうと思います。
目次
『RAW~少女のめざめ~』あらすじ
16歳の少女ジュスティーヌは、獣医学校に入学すると同時に、その大学の寮に入ることになった。
父母がその学校の出身であり、また姉のアレックスも1年先に同じ学校に入学し、寮で暮らしている。
ジュスティーヌの一家はベジタリアンであるのだが、ジュスティーヌは新入生への「洗礼」として、上級生に「ウサギの生の腎臓」を食べるよう強要される。
姉のアレックスに助けを求めるジュスティーヌ。しかしアレックスは平然とウサギの生の腎臓を丸呑みし、「臆病者だと思われたいのか」といってジュスティーヌにもそれを無理やり食べさせる。
それ以来、ジュスティーヌの身体と精神に異変が起こり……。
真面目な優等生・ジュスティーヌ
ジュスティーヌの一家はベジタリアンです。ジュスティーヌが注文したマッシュポテトにほんの少しお肉が紛れていただけで、母親が店員に文句をいいにいく、ジュスティーヌはそれくらい肉食に関しては厳しく禁じられていました。そしてジュスティーヌはそれをきちんと守っていました。
それと大学まで車で送ってきた父親が、別れ際にジュスティーヌに「神童、お前の力を見せつけてやるんだ」というようなことをいいます。茶化しているのかと思ったらそうではなく、どうもジュスティーヌは本当にものすごく優秀らしいのです。
その後大学の教授にも「お前が噂の神童か」といわれます。そしてなんとこの教授、「俺は優秀な生徒が大嫌いなんだ」といってネチネチとジュスティーヌをいじめ始めます。なんという偏屈な教授……。
そういったことや、この下に出てくる新入生への過激な洗礼などでストレスがたまったのでしょうか、ジュスティーヌが自分の髪の毛を無意識の内に口に含んでしまい、後でそれをゲーゲーいいながら吐き出す、というシーンがあります。
大学が異常
初日から眠らせてもらえない
寮に入った初日、ジュスティーヌがベッドで寝ていると、どこかで騒いでいる物音がします。
すると突然男性が部屋に入ってきます。
「誰……!?」と混乱するジュスティーヌ。
そこで男性は「俺は君のルームメイトだ」というようなことをいいます(後に「アドリアン」という名前だと分かる)。
「ルームメイトは女性だと思っていたのに」というジュスティーヌに向かって、「俺はゲイだから大丈夫だ」というような返答をするアドリアン。
ええ……そういうものですかね……? ゲイだとしても男性がルームメイトって、ちょっと抵抗があるような……。
そうこうする内に別の覆面をした男性数名が部屋になだれこんで来て、ベッドやら布団やらを窓から投げ捨てます。
そして校舎を四つん這いで進むよう強要されるジュスティーヌら新入生たち……。
着いた先では新入生を歓迎するという名目で乱痴気パーティが行われていました。
そのどんちゃん騒ぎの最中、やっとジュスティーヌは姉のアレックスに会うことができました。
「久しぶりね。クイック、あんたも久しぶり」などといって姉とその飼い犬クイックに挨拶をするジュスティーヌ(寮で犬を飼っていることにもビックリですが、騒がしいパーティの場にまでその犬を連れてきているアレックスに2度ビックリ)。
動物の血をぶっかけられる
そして姉は、父母が新入生だった時の写真が飾ってある場所に妹を連れて行きます。「パパとママがこんなに赤くなっているなんて信じられない」と、厳格な父母にもはっちゃけていた時代があったことを知って驚くジュスティーヌ。
赤くなって……とは、この時は写真が小さくてなんのことだかよく分からないのですが、そのすぐ後に判明します。
新入生が揃って記念写真を撮る時に、上級生が上から何かの動物の血をぶっかけるというのが伝統になっているらしいのです。
ジュスティーヌもやはり記念写真を撮る際に血まみれになります。
ジュスティーヌたち新入生が血をぶっかけられるシーン ― 映画ドットコムの動画 ―
この時先輩たちはなんだか卑猥な歌を歌いながら行進してくるし……。
この後「先輩に忠誠を誓う」的なことをいわされたりもするし……。
こんな学校イヤだなァ……。
「ウサギの生の腎臓」を食べさせられる
そしてこの後、「新入生への洗礼」として、ジュスティーヌは「ウサギの生の腎臓」を食べさせられます。
ジュスティーヌは「ベジタリアンだから……」と断るのですが、いやいや、ベジタリアンでなくとも「ウサギの生の腎臓」を食べるのは駄目でしょう……! そんなもの食べたら何かの病気になるのでは……!?
姉に助けを求めるジュスティーヌ。しかし姉は「ウサギの生の腎臓」を平然とたいらげ、しかも「みんなに臆病者だと思われるよ!」と、ジュスティーヌにも無理やりそれを食べさせます。
その後血まみれのまま授業を受けさせられるジュスティーヌたち。衛生的にいろいろどうなの……。
その夜、変なものを食べさせられたからか蕁麻疹が出てしまうジュスティーヌ。
それを見て、「あなたも洗礼を受けたのね」とのんびりいう校医。
いや、知ってるならやめさせないと……。というか、これが伝統になっているということは、他の教授たちも血まみれやウサギの腎臓などを見てみぬフリをしているということでしょう……。なぜ誰もこの悪しき風習を改めようとしないのか……。
その他にも紙オムツをはかせられたり…
その数日後、やっと普通に授業を受けられる……とジュスティーヌが教室に向かっていると、女性の先輩に呼び止められ、「あなたなぜそんなに普通の格好をしているの。もっとクラブに行くような服装をしなさい」と注意されます。
「そんな服は持っていません……」とおどおど答えるジュスティーヌに、先輩が驚きのひとこと。
「じゃあ、紙オムツをはきなさい」(そしてバッグから紙オムツを取り出す先輩……。常備しているの……!?)
ジーンズの上からとはいえ、紙オムツをはかせられて教室まで歩いていくジュスティーヌ。いびりなのかなんなのか……。訳が分かりません。
その他後になって分かるのですが、この大学の寮の一室では毎夜のように乱交パーティのようなことが行われているらしいのです(週末には新入生歓迎会の時のような大きなパーティも)。
ジュスティーヌの父母はこの大学の出身なので、こういう学校だと分かっていたはずですから、なぜ娘2人をこの学校に入学させようと思ったのか……不思議でなりません(時代が変わって、父母の時はここまで過激ではなかった、という可能性もありますが)。
車の事故
この映画には、3度車の事故シーンが出てきます。
1度目はオープニング。車通りがないだだっ広い道を、フラフラと誰かが歩いているロングショット。
同じ道に1台の車が現れて……先ほどの人はもういなくなったのか……? と思いきや、突然車の前に人が飛び出してきます。
車は木に衝突して大破。ぶつかった人はしばらく車道に倒れていますが、のっそりと起き上がり、車に近づいていきます。
2度目はジュスティーヌとアドリアンが2人で外出する際に、乗っているバスから事故が起きた現場を目撃します。
そして3度目は……これは後に書こうと思います。
ジュスティーヌの姉・アレックス
真面目なジュスティーヌと違い、アレックスはすっかり大学になじんで楽しそうに過ごしています。
優等生の妹をうっとうしく思う時もあるようですが、なんだかんだいいつつかわいがっています。「クラブに行くような服」を持っていなかったジュスティーヌにそういった服を貸してくれたり、立ちション(!)の仕方を教えてくれたりもします。
ある時ジュスティーヌは、アレックスの部屋の洗面所で見覚えのある薬を見つけます。「ウサギの生の腎臓」を食べて蕁麻疹が出た時に、自分がつけていたのと同じ薬……。姉もジュスティーヌと同じような体質だった……?
食欲増進
「ウサギの生の腎臓」を食べて、蕁麻疹が出て苦しい思いをしたにもかかわらず、何故だかお肉の感触が忘れられないジュスティーヌ。
ああ、肉、肉が食べたい――と思ったのか、ついに学食でハンバーグを万引きしてしまいます(白衣のポケットに入れたのでその部分がベタベタに)。
それを学食のおばちゃんにアッサリと見破られ、ジュスティーヌがモゴモゴしていると、ゲイのルームメイト・アドリアンが救いの手を差し伸べてくれます。
ハンバーグの万引きを見て心配してくれたのか、アドリアンは休日にジュスティーヌを外に連れ出します。そこでジュスティーヌは、初めてパンに挟んだケバブを食べるのですが、よほど美味しかったのでしょう、「肉……肉……!」と目をランランとさせながらケバブにがっつきます。
そしてその夜、外出の際にどこかでコッソリ仕入れたのであろうお肉……それも生肉(とり胸肉?)を冷蔵庫から取り出し、クンクン……とにおいをかいでから、徐にパクリ、とむしゃぶりつくジュスティーヌ。
ベジタリアン⇒生肉大好き、と一足飛びに鞍替えしてしまったジュスティーヌ。極端すぎます。というか、生の鶏肉のようなものを食べて食中毒などにはならなかったのでしょうか……?
ついに人肉に…しかも身内の…
姉のアレックスが、ジュスティーヌのムダ毛を処理してあげようとブラジリアンワックスをジュスティーヌのキワどい部分に塗ります。するとそれが剥がれなくなってしまい、ハサミで切り取る事態に。
緊張して震えるアレックスの手を見て怖くなり、「やめて!」とその手を振り払うジュスティーヌ。
するとそこで大変な事故が起きます。なんとアレックスの左手の中指がハサミで切断されてしまったのです。
それを見てアレックス本人は気絶します。
救急車を呼んだり、切れた中指を探したりとあたふたするジュスティーヌ。
しかし見つけた中指をまじまじと眺める内、ジュスティーヌの中にある欲望が頭をもたげてきます。
肉……生肉が目の前に……(ゴクリ)!
はじめは垂れてくる血をペロペロなめるだけだったのですが、ひとくちだけ……と断面をかじると、もう止まりません。ガツガツと姉の中指をむさぼり始めるジュスティーヌ。あらかた食い尽くして、骨までしゃぶろうか……という所で、姉のアレックスが目を覚まします。
指が切れただけでも相当のショックだったでしょうが、目が覚めたら妹が自分の中指にかじりついている……それを目撃した時のショックは計り知れません。
しかし姉のアレックスはそこでジュスティーヌを激しく責めたりはせず、ただ一筋、ポロリと涙を流します。
この涙の意味は一体なんなのか……。
ちなみに、アレックスの指を食べたのは飼い犬のクイックということになり、かわいそうなことにクイックは安楽死させられてしまいます。
姉・アレックスの奇行
病院からの帰り道、姉アレックスは話がある、といってジュスティーヌをある場所に連れて行きます。
それはあのよく車の事故が起きる道路の脇でした。
話がある、といった割にアレックスは特に何かを語る訳ではなく、突然車道に飛び出し、ある1台の車に自らぶつかりに行きます。
車は横道に逸れて大破、跳ね飛ばされたアレックスも負傷します。
アレックスはフラフラになりながらも、車に近づいていき、ドライバーを確認。「もう助からない」というと、突然瀕死のドライバーにかぶりつき出します。
「何やってるの……!? 吐き出して!」と自分のことは棚に上げてアレックスの人肉食いをとがめるジュスティーヌ。
するとアレックスは激昂して、「あんたのためを思ってやってるんだ!」と声を荒らげます。
この辺り、ハッキリ語られてはいないのですが、アレックスもどうやら1年前にウサギの生の腎臓を口にして以来肉の美味しさに目覚めて、その後生肉、人肉……と、ジュスティーヌと同じルートを既に辿っていた、ということのようです。
冒頭や、ジュスティーヌが外出した時に見かけた車の事故はアレックスの仕業で、事故でグチャグチャになったドライバーのお肉をコッソリひとくち頂戴していたという……(あんまり食べると人食いが出た、などと騒ぎになってしまうので、恐らくバレない程度に)。
ライオンの親が子に狩りをレクチャーするような感じで、アレックスはジュスティーヌに「人肉が食べたくなったらこうすればいいよ」と教えてくれたということなのでしょう。
アレックスが病院に来た父母にジュスティーヌが指を食べたことを告げ口しなかったのは、自分にも後ろ暗い所があるから――と考えれば納得できます。
指にむしゃぶりつく妹の姿を見て流したあの一筋の涙は、妹が自分の指を食べている、というショックももちろんあったでしょうが、その他に、「ああ、あんたもあたしと同じなのね……」という、嬉しいような、哀しいような、信じられないような、複雑な気持ちが流させた涙だったのではないでしょうか。
性欲の亢進
食欲と共に、ジュスティーヌの中で日に日に増していくものがありました。そう――それは性欲。
もうお肉も食べちゃったしさ、優等生やってたって誰も褒めてくれないしさ、という感じで何かのタガが外れてしまったのでしょうか、鏡の前で姉のアレックスが貸してくれた「クラブに行くような服」を着て、「冷たい死体とセックス」というぶっ飛んだ歌詞の音楽を聴きながら狂ったように踊りまくるジュスティーヌ。そしてついには鏡とベロチューしだします。一体どうしちゃったんだか……。
部屋を出ると、ルームメイトのアドリアンと姉のアレックスがゲームに興じていました。
いつの間に仲良くなったの……? と訝しがるジュスティーヌ。アドリアンがいなくなってからジュスティーヌは姉にいいます、「彼には手を出さないで!」。
ジュスティーヌがハンバーグを万引きする所を目撃しても優しくしてくれたアドリアン。そしてアドリアンが男性同士でそういった行為に励んでいるのを目撃してしまったせいもあるのでしょうか、それとアドリアンはいい身体をしているので、単純に美味しそう、というのもあったのでしょうか、ジュスティーヌはアドリアンのことが気になり始めているようでした。
上半身裸でサッカーをするアドリアンを見つめるジュスティーヌ――その目つきはまるでハンターのようです。挙げ句の果てには鼻血まで出す始末。
ある夜、悪夢を見て寝つけなくなったジュスティーヌは、パンツ一丁の姿でフラフラと部屋を脱け出し、大学の寮の一室へと向かいます。そこでは毎夜のように乱交パーティまがいのことが行われているようです
ジュスティーヌがそこに足を踏み入れた途端、青いペンキをぶっかけられます。
そして同じように黄色いペンキをかけられた男と部屋に閉じ込められ、「緑色になるまで出てくるな」といわれます。
はじめはいやがっていたジュスティーヌですが、黄色い男が「大丈夫だから……」とかなんとかいう内、ちょっとその気に。
しかしキスしながら男の唇の一部を食いちぎってしまい、黄色い男は悲鳴を上げます。
頭がおかしい、といわれて乱交部屋から追い出されるジュスティーヌ。
部屋に帰ってシャワーを浴びながら、口の中にあった男の唇の一部をモグモグ(ホントどうかしてる)……。
シャワーから出るとアドリアンが心配して部屋に帰ってきていました(アドリアンも乱交部屋にいた)。
2人でベッドに寝そべりながら、「何か深刻な問題があるのでは……」とジュスティーヌを気遣うアドリアン。
大丈夫、と一旦は自分の部屋に入るものの、「やっぱり深刻なの……!」とアドリアンに思いを打ち明けるジュスティーヌ。
ゲイのビデオを見てひとりで何ごとかをおっ始めようとしていたアドリアンはちょっと慌てますが、ゲイだというのになぜだかジュスティーヌとそういう関係になります。ゲイのビデオを見て性欲が高まっていたからなんでしょうか……?
ジュスティーヌはジュスティーヌで、その行為の最中にアドリアンにやたら噛みつきたがります。ジュスティーヌはお肉単体も大好物なのですが、どうも性欲と食欲がリンクしていて、気持ちよくなってくると何か(というか肉的なもの)を噛まずにはいられない性癖の持ち主のようです。アドリアンが噛ませてくれないので、仕方なく自分の腕を血が出るほど噛んでフィニッシュ……!
その日の明け方、ジュスティーヌが窓を開けてタバコを吸っていると、隣の校舎の屋上に姉のアレックスらしき人影を見つけます。
アレックスがジュスティーヌに立ちションの仕方を教えてくれたのも屋上だったので、アレックスはたまに気晴らしに屋上に上ることがあるようです。しかしこの時、ジュスティーヌがアレックスの姿を確認できたのと同じく、アレックスのほうからもジュスティーヌの部屋が見えていた……?
姉妹のキャットファイト
道を踏み外す楽しさを覚えてしまったのか、大学の乱痴気パーティに出て酒を煽るジュスティーヌ。
酔っ払って正体不明になっているジュスティーヌを、姉のアレックスがどこかに連れて行きます。
これは翌日になって分かることなのですが、アレックスはジュスティーヌが死体(医学部などもある大学なので死体安置所がある)に噛みつく所を見世物のようにその場にいる寮生たちに見せていました。その中の誰かがその様子を動画で撮っていて、その動画はすぐに大学の生徒たちに広まっていました。そのため、その日の朝からジュスティーヌはおかしな目で見られていました。ジュスティーヌはその動画をアドリアンに教えられて知ったのでした。
なぜアレックスはジュスティーヌに見世物のようなことをさせたのか……これも詳しくは語られていないのですが、恐らくは嫉妬でしょうか。アレックスはジュスティーヌとアドリアンの部屋を屋上から見ていて、2人が結ばれたことを知ったのでしょう。
アレックスがアドリアンをどれほど好きだったか――これも詳しく描写がある訳ではないのですが、私には「ちょっと興味があるけど、ゲイでなければな……」くらいの感じに見えました。あとはやっぱり単純に美味しそうだな……という気持ちがあったのでしょうか。
ただもしかしたら、妹のものになったと思った途端、なんだか急にアドリアンが欲しくなった、という可能性もあるのかもしれません。
動画を見て激怒したジュスティーヌは、アレックスを構内で見つけて掴みかかります。そこからは壮絶な女同士のキャットファイトが繰り広げられます。
お互いの得意技、噛みつきが炸裂……! そして姉のアレックスがジュスティーヌの頬を食いちぎり、痛烈なひとこと、「クソの味がする」(!)と吐き捨てます。
頬がえぐれるほどの深い傷を負ったジュスティーヌ。それだけの喧嘩をしたその直後に、自らがかじったジュスティーヌの頬の治療をするアレックス……。なんとも不思議な姉妹です。
姉妹に関わったばっかりに…
その夜、アドリアンの横で目覚めるジュスティーヌ。私、幸せ……とばかりにアドリアンを見つめるジュスティーヌですが、何かがおかしい、と気付きます。布団をめくると……、
アドリアンの足の肉が何者かに食べられている……!
ジュスティーヌはてっきり自分がやってしまったのだと思い、「どうして抵抗しなかったの……!?」と泣き叫びます。
しかしアドリアンの背中に何かを突き刺したようなあとを見つけ、それに続けて血のついたスキーのストックを発見。
血のあとを辿るとそこには……。口の周りを血だらけにした姉、アレックスの姿がありました。
冷蔵庫の前で放心したように座り込んでいるアレックス、その額にスキーのストックを押し付けるジュスティーヌ……。
ついに姉を殺すのか……と思いきや、ジュスティーヌはアレックスを立たせて、シャワールームに連れて行き、血にまみれた身体を優しく洗い流してあげます。
実はお母さんも…
アレックスは刑務所に入れられます。家族が面会に来て、一見しおらしい態度を取っていましたが、ジュスティーヌと2人になった途端アレックスはジュスティーヌに中指を立ててきます(なくなったほうの中指も、あれば立っているような形になっている)。
そこで負けじとジュスティーヌも食いちぎられた頬の傷をガラスに押し付けます。
中指と頬、そして恋人を殺されたが姉のことは殺さずに生かしてあげた、これで何もかもお互い様だよ、ということなのでしょうか――本当になんとも不思議な姉妹です。
そしてジュスティーヌは実家でご飯を食べています。
母親が台所に立った途端、父親が「母さんを恨むなよ」とジュスティーヌにいいます。
「誰も悪くないんだ……お前には解決策を見つけてほしい」といって、シャツの胸をはだけて見せる父。
父の胸には無数の噛み傷が……。
性欲が高まると肉的な何かを噛まずにはいられないという性癖は、母から娘に受け継がれたものであったのだ、というオチでした。
感想
オチに関しては「ああ、なるほど」という感じではありましたが、血筋だとか遺伝子だとかで運命が決まってしまうとしたらちょっとなんだかなァ……な話ですよね。
「解決策を見つけてほしい」などと父親が他人事のようにいっていたのには呆れさせられましたし、それを映画の中で示してくれなかったことも残念です。
肉食を戒めることにより娘たちの欲望に蓋をしてきた母親の教育方針もどうかと思いました。
解決策を導き出せるように、欲望を抑えつけるのではなくコントロールする術を子供の頃から両親が教えてあげるべきではなかったのでしょうか。
お肉をことさらに避けるのではなく普通に食べさせて、男性に関しては……「あんたたちはSッ気が強い可能性があるから、ドMの男を見つけなさい」と伝えておくとか……。
欲望が芽生えないように育てる、なんていうのはどう考えても不可能ではないでしょうか。それなら生まないほうがまだよかったのでは――という気がします。
両親が無責任で、なんだかアレックスもジュスティーヌも被害者という感じがしました。もっとかわいそうなのはアレックスに食べられてしまったアドリアンと、冤罪で安楽死させられた犬のクイックですが……(車の事故の被害者も)。
とまァいろいろ考えさせられましたし、上に書いた他にも、丸尾末広の漫画ばりに眼球舐めを行っているカップルが映るという気になるシーンがあったりもしてなかなか面白くはあったのですが、ものすごく怖いかとか、ものすごくグロいかとか、傑作かと問われたら、全てそこまでではないかなと……。わざわざ映画館で観なくても、レンタルまで待ってもよかったかな……というのが正直な感想です。
ちょっと変わった映画が好きな方であれば、その内レンタルで観てみてもいいかもしれません。
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