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ボンデージ・ミステリ作家 朝山蜻一

time 更新日:  time 公開日:2009/07/31

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「いや、程度だよ。百年前のヨーロッパにはあったそうだが、人間の胴とは思えないほど細いんだ」
「細いって、どのくらいですの?」
       ……中略……
両手をゆっくりマダムの前に突き出し、その大きな眼で覗くように、指で円を作って見せた。
「このくらい――」
朝山蜻一『白昼艶夢』

西荻窪での探偵小説についてのトークショー」という記事で少し触れた朝山蜻一の小説『白昼艶夢』と『真夜中に唄う島』を読みました。これぞまさしく「エロチック・スリラー」といった感じの話ばかりでした。

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『真夜中に唄う島』の解説では「B&D=ボンデージ(拘束)&ディシプリン(服従)小説」という風に言い表されており、朝山蜻一自身については「偉大なるフェティッシュの王」という賛辞が贈られています。

朝山蜻一のデビューのきっかけは、昭和24年の『宝石』のコンクール(江戸川乱歩が審査をしていた)だったらしいのですが、そのデビュー作というのが『くびられた隠者』というものです(『白昼艶夢』所収)。
導入が謎めいているので探偵小説の範疇に入らないことはないのでしょうが、トリックや犯人あての要素は皆無に等しい、本格探偵小説とはおよそかけ離れた小説です。
これはこの話に限ったことでなく、『白昼艶夢』に収録されている全ての話(短編小説16作)に共通していえることです。そして大体の話に世間一般でいう所の異常性欲者が登場します。

彼らのこだわりは皆尋常一様でないのですが、中でも「腰が細い女に異様に執着する男」が描かれている表題作『白昼艶夢』は凄まじいです。
これは作者さんの趣味であったようで、『真夜中に唄う島』にも腰の細い女性が出て来ます(女性の腰の描写が2ページにわたって続く箇所があります。どれ程の細さかわかりやすい文章を抜粋してみると、「片手で握れるのではないかと思うほどくびれていた」)。

パターンとしては、傍若無人な男におとなしい女性がついて行く……という話が多いかと思います(まるで真逆の場合もありますが)。
しかしどの話も、趣味嗜好云々というより、普段は表に出せぬ己の欲望を文章によってイキイキと具現化している、という情熱が感じられて清々しいです。
かといって情熱だけという訳でもなくて、きちんと小説としても成り立っていると思います(私は『奇譚倶楽部』に載っている小説はちょっと露骨すぎてついていけませんでした)。
普通小説とSM小説の中間といった感じで、ちょっとおかしないい方かもしれませんが、私みたいな半端者にはちょうど好い加減の雰囲気に思えました。

『真夜中に唄う島』も面白いです(これは結構長めの小説)。ちょっと陰惨すぎるきらいもあるのですが、好き放題やらかしといてもういいや、といわんばかりにスパッと終わるのが潔いです。
これには『幻影城』に連載されていたという『蜻斎志異』全12話も収録されています。これはこれまでの話とは少し趣が違って、幻想小説に近いのかなァという感じでした(『真夜中……』などとはだいぶ年月が隔たっているようです。ちょっと中井英夫っぽい雰囲気があるような)。
ちなみに、『真夜中に唄う島』の表紙はちょっと小説のイメージと合わないような気がします(これだと何だか古い週刊誌のグラビアみたいな猥雑さが……それはそれで悪くはないのですが)。

探偵小説と思って読むと違和感がありそうですが、どれも小説としては読み応えがあるものばかりです。作者さんと同じような趣味の方は無論ウハウハでしょうが、そうでない方も楽しめる……否、誰でもという訳にはいかないかもしれませんが、ちょっと風変わりな小説が好き、という方なら楽しめるのではないかと思います。
ご興味がある方はよかったら読んでみてください。

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