うらなか書房のあやしいグッズあり〼

うらなか書房と申します。AmazonYahooClubTTTrinitySUZURIなどで、ちょっとあやしいTシャツやグッズの販売をしています。このブログでは、おすすめのホラー映画や漫画、本、その他風変わりなもの・場所などの紹介をしています(たまにお役立ち情報や暗い話も書きます)。

団鬼六『伊藤晴雨物語』のことなど

time 更新日:  time 公開日:2011/08/14

ちょっと前のことですが、ヴァニラ画廊に「団鬼六・追悼絵画展」を観に行きました。
う~ん、スゴかった……いろんな意味でスゴかったです。

私は団鬼六さんの本というと『伊藤晴雨物語a』と『真剣師小池重明a』くらいしか読んだことがないのですが、どちらも面白かったです。

特に『伊藤晴雨物語』――団鬼六と責め絵画家・伊藤晴雨という組み合わせからすると、ものすごくどぎついものを想像されるかもしれませんが、団さんはこの『伊藤晴雨物語』を書き上げてからいわゆるSMポルノ小説に本腰を入れ始めたそうで、この小説の原稿を『奇譚クラブ』に郵送した後、三歳の長男を背負って海を眺めながら、

親父は明日からポルノ作家になるからな、と、背中の長男に詫びるような気持で口走った
団鬼六『伊藤晴雨物語』~著書ノート 契機~

のだそうです。

団鬼六さんは意外にもSMが好きで好きでたまらなかったという訳ではなくて、生活のためにSMポルノ小説を書き始めたということなのですね(「著書ノート」にはその他、「創作に対する未練を断ち切り」「文学青年的な悩みを一人前に抱いていたような気がする」などといった言葉が見受けられます)。
つまり、この『伊藤晴雨物語』が団鬼六さんとして書いた唯一の「小説らしい小説」ということらしいです。

しかし――というかそれゆえにというべきなのか、団鬼六さんが晴雨に向ける眼差しはとてもあたたかいような気がします。

「たとえ貴方のお描きになっていらっしゃるものが永久に人に認められないもの、いえ、人に嫌悪感を抱かせるだけのものであったとしても、事実、自分の魂がその絵を描きたがっているのなら、迷わず描きつづけるべきだと思いますわ」
団鬼六『伊藤晴雨物語』 p.47

「いいじゃありませんか、変質者だって。変質者が変質者なりの芸術を生み出す、これだって立派な仕事だと思いますわ」
団鬼六『伊藤晴雨物語』 p.47

こういうような台詞に、世間に「変態画家」と罵られても、自分の好きなことをやり通した晴雨への尊敬の念が感じられます。
そういう私も、なぜだか変態道を貫いた人に憧れのようなものを感じます(私には変態趣味はないのですが……いや、これもだからこそなのか)。

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という本があるのですが、弾圧されながらも艶本・珍書などを作り続けたという宮武外骨梅原北明などのことが載っていて印象に残っています(晴雨に関してもちょこっと載っています)。
世間や権力に抗うことになろうともやらずにはいられない――そこまで打ち込めるものがあるというのはすごいことだと思います。

また『伊藤晴雨物語』には、

「先生は、この趣味を持つ人々が、犯罪に脱線することのないよう警戒する意味で、責め絵を描かれている、そんな風に考えるときがあります」
団鬼六『伊藤晴雨物語』 p.113

このような台詞もあります。

ゴーストワールド

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という漫画にも、同じようなことをいうロリコンが登場します(CGのロリコン写真があってよかった、だから現実で犯罪を犯さずに済む、というような)。

これは賛否両論ありそうですが、私はこの人たちのいうことは一理あると感じるので、エロやグロはあまり規制しない方がいいのではないかと思ったりします。もちろん作り物であれば、の話ですが。

それと晴雨はもちろんですが、大森という文学青年のデカダン具合がすごいです。大森さんを主人公にして本が一冊書けそうなくらいです。いや、そんなことをいったら、この小説に出てくる人は皆キャラが濃いので、それぞれが主人公になってもおかしくないのですが……。

どこまでが実在した人物か、実際のエピソードかなどは不明なのですが、乱歩らしき人物や、以前に「探偵小説の論争」という記事でちょこっと触れた浜尾四郎らしき人物が登場します。
また、妊娠中の奥さんを芳年の絵のように逆さ吊りにしたというエピソードは『美人乱舞―責め絵師 伊藤晴雨頌a』と、上でちょこっと紹介した『発禁本―明治・大正・昭和・平成 (別冊太陽)a』にも載っていたので実話です。

伊藤晴雨妊婦逆さ吊り写真
『発禁本―明治・大正・昭和・平成 (別冊太陽)』より

逆さ吊りについては詳しくはこちら

上記妊婦の逆さ吊りからの流れで、

残酷趣味というものは、実際は、空想の域から脱することはないと晴雨は知覚したのである。
団鬼六『伊藤晴雨物語』

という一文があります。

また全く別の作品ですが、丸尾末広の『笑う吸血鬼

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という漫画では、少年が吸血鬼の真似事をして少女の血を吸ってみた所、「オエー、ま、不味い」という風になる場面がありました。

そして乱歩も『幻影の城主a』で、

大蘇芳年の無残絵は好きだけれど、本当の血には興味がない
江戸川乱歩『幻影の城主』

と書いています。
結局何がいいたいかと申しますと、

空想 > 現実

――ということなのではないかと。物騒なことは実際に行うのではなく、空想、妄想、想像に留めておいた方がきっと楽しいのだろう……と、上記にあげた作品などを読んでそんなことを思いました。

ご興味がある方はよかったら『伊藤晴雨物語』などをお読みになってみてください。

伊藤晴雨物語

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オマケ

エロポン

ヴァニラ画廊で入手した大人のフィギュアです。これを好奇心から買ってしまっていいものかと棚の前で逡巡すること数分……。で、結局購入しました。以前に「タモリ倶楽部」で似たようなフィギュアが出てきてちょっと気になっていたのですよね……。すごくよく出来ています。