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何十年か後と考えていた死が数年先に迫ってきているかもしれない恐怖と、反出生主義者とそれ以外の人々の歩み寄りとしての安楽死について

time 更新日:  time 公開日:2019/07/13

おととし母を食道がんで亡くしたのだが、今年になり今度は自分の乳がんが発覚した。
母の闘病は大変苦しそうであったので(詳しくはこちら)、私はがんになることを恐れていたが、「まァ、もしも自分ががんになったとしても、その頃にはがんの特効薬ができているだろう」と半分楽観的に考えてもいた。
それがまさか自分がこんなに早くがんになるとは……。

病院で告知された時はやはりショックだったが、泣いたり取り乱したりはせずに割と冷静に話を聞くことができた。
ただ家に帰って寝ようと布団に入ったら涙が止まらなくなった。
あの母親のやせ衰えた姿、何十年か後にそういった状況が自分にもやってくるのだと考えるだけで恐ろしかったのに、それがもしかしたら数年先にまで迫ってきているかもしれない恐怖……!

その後の検査で、不幸中の幸いというか、ステージは1だと判明したのだが、悪性度が高いので抗がん剤をすることになった。
右胸は手術でまったいらになった。抗がん剤で髪も眉もまつ毛も9割方抜けた。客観的に見たらひどくかわいそうな姿になっていると思う。

ステージ1とはいえ悪性度が高いので、2、3年以内に再発する可能性がある。再発したら基本は完治しないといわれている。やはり死は数年先にまで迫ってきているのかもしれない。そう思うと本当に本当に恐ろしい。

私はお酒も飲まないし、煙草は10年前くらいにやめた。食生活もそれほど乱れていないと思う(そういえば母もお酒はほどほど、煙草は吸わない、食生活もごくごく一般的であったのに、なぜだか女性には珍しい食道がんになっていた)。

その他、

出産・授乳経験がない

と、ある場合に比べて乳がんのリスクが高くなるらしい(参考リンク)。

私の場合はホルモン受容体が陰性の乳がんなのでこれも関係ないといえば関係ないが……。
しかしもし万が一これが原因だったとしても、私は「子供を生んでおけばよかった」とは全く思わない。
むしろ、子供につらい闘病生活を見せて「自分もいつかああなるのでは……」という不安を植えつけなくてよかった。そして自分もいつか苦しんで苦しんで死ぬのだという恐怖を与えずに済んだのでよかったと思う。

大したことを成し遂げていないし、これからも成し遂げないであろう私の人生だが、

子供を生まなかった

すなわち恐怖の連鎖を断ち切れたことは、誇りに思ってもいいのではないかと考えている。

ちなみに、「子供を生んでから自分は死の恐怖を感じなくなった」という人がいるが、それはほとんど思い込みだと思う。
実際にがんの告知などをされて、それでも死の恐怖を感じない人はごく少数だろう。私の母は死ぬことにものすごく怯えていた。
それに「子供を生むことにより死の恐怖から逃れる」というのは、以前にも書いたが、不幸の手紙を回すような感じがして私は首肯しかねる。

では死の恐怖から逃れるにはどうしたらいいのか――。反出生主義気味の私としては、生まれないのがベストな訳だが、もう生まれてしまった自分やその他の人たちはどうしようもできない。
2番目にいいのは(私としては)不老不死(もちろん病気にもならない)だが、これも現実的ではない。

死の恐怖を和らげる現実的な解決策としては、

安楽死

これに尽きるのではないだろうか。

「反出生主義はいかがなものか」という人でも、安楽死に反対する人はあまりいなさそうである。
人間は必ず死ぬことが決定づけられている。その際(か、下手したらその数年前から)十中八九苦しむ。ほとんどの人間が苦しむのはいやだろう(マゾヒストは好きにしたらいい)。

反出生主義者も人生はつらいことの方が多いといっている訳で、病気や死の苦しみはこれの結構な割合を占めるはずだ。
もしも安楽死が実現したら、反出生主義者の何割かは脱・反出生主義者になるかもしれない。

もちろん、誰でもというのはちょっと問題がありそうなので、安楽死を導入しているスイスなどを見習って、末期がん患者だとか、回復不能の病にかかっているなどの条件は必要だろう。
安楽死が難しければ、せめてターミナルケア尊厳死はどこの病院でも当然の流れにしてほしい。

日本での一刻も早い安楽死や尊厳死の実現を願う。

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