「シュルレアリスム展」を観て来ました。
今回、特に何がお目当て、という訳ではなく、何となくこれは観といた方がよさそう……と半分お勉強気分だったのですが、行ってよかったです。これぞシュール、これぞアート、といった展覧会でした。
シュルレアリスムというと、どうも賢い人たちのスカした遊戯的なイメージがあり、本で読む限りではそんなにハマれなかったのですが、今回生で目にした所かなり楽しめました。特に改めてじっくり見ると写真に秀逸なものが多いように思えました。
ドラ・マール
Sans Titre (Main-coquillage), 1934 – Dora Maar – WikiArt.org
聞いたことある名前……と思ったら、ピカソの恋人だった女性らしいです。
貝から手が生えている写真は正にシュール、という感じですが、他にも、少年が腰に手を当ててそっくり返っている写真(まねをする子ども)、少年が少年をかついでいる写真(無題[夢幻的])が何とはなしに不気味でした。
クロード・カーアン
クロード・カーアンの「無題[手]」という写真もよかったです。3つの手が重なっていて、1番上の手の小指にあたる部分が小さな手に置き換えられているという……(画像は「シュルレアリスム展」の図録より)。
ヴィクトル・ブローネル
Painted from Nature, 1937 – Victor Brauner – WikiArt.org
絵ではヴィクトル・ブローネルの初期作品がかなり気になりました。勉強不足で、この人のことは今回初めて知ったのですが、「モティーフについて」という絵と(上の絵)、「光る地虫」、それと欲望の解剖学シリーズに惹かれました。
眼球や鼻がもちのように伸びて先端が絵筆のようになっていて絵を描いていたり、女性(?)が宇宙人らしきものにビームで攻撃されていたり、口からクワガタの角のようなものが生えていたり……。文章にすると???ですが、上記リンクから画像を見ることができます。
この人の作品は結構たくさん展示されていましたが、1930年代に描かれたものや作られたものが精彩を放っているように思えました。
キツネの剥製と木のテーブルを組合わせたオブジェがあったのですが、頭部が尻尾の方に向かって吠えているような形になっているのが何だか気持ちが悪いのです。何かこう、すわりが悪いというのか……。
Wolf-Table, 1939 – 1947 – Victor Brauner – WikiArt.org
ヴィクトル・ブローネルの作品に限らず、シュルレアリスム自体が中盤~終盤にかけて徐々に失速していったのかな、という気がしました。本物の獣骨や鳥の羽を使ったりという作品はまァ面白くなくはないのですが……絵もオブジェも、ちょっと「やることなくなってきちゃった」感が漂っていたような……。
私がもっとも苦手なのは、様々なものを入れた小瓶が箱の中に収められていて、「博物館」と名付けられていたりする作品……コンセプチュアルアートのはしりのようなもの……。
それと幾何学的なオブジェやそれを写した写真など(こういうのは割と初期の頃からあるようですが、後半特に目立っていたような)……こういうものの魅力は私にはまだちょっと理解できなかったかなァ……という次第です。
しかし「いつ、どこで、誰が、どうした」というようなゲームで、
なんてカッチョイイ文章、一生にいっぺんでいいので作ってみたいものです。まず先頭の「甘美な」という語句が照れ臭くって到底出て来そうにないですが……。
前から薄々思ってはいたのですが、芸術家というのはちょこっと、いや大分ナルシストでないとやっていけないものなのだろうという感が強まりました。
5月15日まで開催されているそうなので、まだの方は行ってみてもいいかもしれません。
好き嫌いはともかくとして、何らかの刺激はあるのではないかと思われます。
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