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生まれないのが一番幸せ~反出生主義や虚無的、厭世的な言葉集

time 更新日:  time 公開日:2016/07/20

浮き沈みが激しかろうが激しくなかろうが基本的に人生はつらい

上記の記事でも書いたが、人生とは基本的につらいものだと思う。
しかし既に運悪く生まれてしまった私たちは、つらいながらもどうにかしてその人生を楽しんだ方がいいとも思う。
そして、一見何もかもうまくいっているような人たちを羨んだりせず、また、一見楽して生きているような人たちを蔑んだりもせず、「皆生老病死という根本的な悩みを抱えて生きているのだな」と世の中の人々がいたわり合えるのが理想である。

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生まれないのが一番幸せなのでは

しかしやはり人生とは基本的につらいものだし、面倒なことも多いので、実をいえば生まれないのが一番幸せなのではないだろうか。
人を生み出すことにより、その人につらい人生を背負わせることになる。
生まれなければ幸せになろうと頑張る必要もない。老後の心配もいらない。病気にもならないし死ぬこともない。

ひと昔前だったら、避妊の技術が発達していなかったり、世間体を気にしたりしてやむを得ず生んでいた人も多かったのだろうが、現代では生まない選択が比較的容易にできる。
わざわざつらい思いをさせるために子供を生むことは、生まれてくる子供にとってかわいそうなことではないか……?
人間関係や仕事、お金、病気などで悩まされ、その挙げ句に必ず死ぬと分かっているのに……その際十中八九痛かったり苦しかったりするのが分かっているのにもかかわらず、この世に子供を生み出すのは残酷なことではないだろうか。


ダンサー・イン・ザ・ダーク

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映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では、主人公は目の病気で、それが遺伝すると分かっていながら息子を生んだ。分かっていながら何故生んだ……? というある人物の責めるような問いに対して、主人公は「赤ちゃんを抱きたかったから」と答える。

これを主人公のエゴと感じる方はかなりの数にのぼるのではないだろうか。では一般的な出産がそうではないのかといえば、私はそんなことはないと思う。子供がいつか必ず死ぬと分かっていながら……しかもその子供が成長して、「自分がいつか死ぬ」ということを認識するのを分かっていながら生むのも、また相当な親のエゴといえないだろうか(バタイユによると動物と違って人間は「性と死について不幸な自覚を抱いている」)。

現代の少子化の大元の原因は、こういうことに薄々気付いてしまった人が多いからなのかもしれない(その他経済的な問題や親になる自信がないなど、分かりやすい原因ももちろん相まっているとは思うけれど)。


――というようなことを考えていて調べてみた所、反出生主義というものにあたるようです。
ショーペンハウエル(1788–1860)やシオラン(1911–1995)がこの主義を唱えていたようですが、実はそれよりもっと前から似たような考えを持っている方はいたようです。

以下で私が知っている反出生主義虚無的厭世的な言葉をいくつかご紹介します(順不同)。

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反出生主義や虚無的、厭世的な言葉集

テオグニス

地上にある人間にとって何よりもよいこと、それは生まれもせず、まばゆい陽の光も目にせぬこと。
だが生まれた以上は、できるだけ早く冥府(ハデス)の門を通って、うず高く積み重なる土の下に横たわること。
テオグニス『エレゲイア詩集』

テオグニスはなんと紀元前に活躍したというギリシアの詩人だそうです。そんなに昔から反出生主義的な考えを持っている方がいたのですね。
しかもこれには元ネタである「大脚韻」というものがあったのだとか。古代ギリシアではある程度反出生主義が確立されていたということなのでしょうか。


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ホルヘ・ルイス・ボルヘス

鏡と性交は人間の数をふやすがゆえに忌わしい
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』

江戸川乱歩

たとえ、どんなすばらしいものにでも二度とこの世に生れ替って来るのはごめんです。
江戸川乱歩『探偵小説四十年 最初の「江戸川乱歩全集」身辺多事の年』

雑誌『新青年』の作家アンケート、「あなたが生れ替ったら(どうなさいます)」という問いに対する答え。

乱歩の代表作『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』『パノラマ島奇談』『陰獣』『芋虫』『押絵と旅する男』などはいずれもデビューから10年以内に書かれたものです。この頃乱歩は大の人嫌いであったのだとか(戦争中にお酒が飲めるようになり人好きに)。
このアンケートは昭和6年のものなので、まだ乱歩がバリバリに人嫌いだったであろう頃の答えです。


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香山滋

思索することを知りはじめた彼等はたしかに不幸ではあった。
香山滋『恐怖島』

ジョルジュ・バタイユ

他の人間にとってはこの世はまっとうなものに思われる。まっとうな人間にはそれはまっとうに見えるのだ、なぜなら連中は去勢された眼をしているからだ。
ジョルジュ・バタイユ『眼球譚』

去勢された眼」……中二病っぽくてカッコいい言い回しです。


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紀元前ギリシアの哲学者・ヘゲシアスも似たようなことを言っています。
生は気の狂(ふ)れた者にしか善きものとは見えない

また寺山修司が、

ジョルジュ・バタイユによると、人と豚やイヌとの違いは、「人が性と死について不幸な自覚を抱いている」ということになるらしい
佐伯俊男『痴虫2号』

バタイユについて上記のようなことを述べています(『痴虫2号a』佐伯俊男論)。

夏目漱石

今の世に合うように上等な両親が手ぎわよく生んでくれれば、それが幸福なのさ。
夏目漱石『吾輩は猫である』


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室生犀星

友よ、むしろ哀しきわれを生める
その母のひたひに七たび石を加ふるとも
かなしきわが出産はかへらざるべし
室生犀星『滞郷異信』

胎内回帰願望とその諦めがひしひしと伝わってくる詩です。


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芥川龍之介

人生は狂人の主催に成ったオリムピック大会に似たものである。
芥川龍之介『侏儒の言葉』

人生は地獄よりも地獄的である。
芥川龍之介『侏儒の言葉』

地獄が与える苦しみには一定の法則があるが、人生が与える苦しみはそれほど単純なものではない……というのがその理由だそうです。


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ペイター

いずれも皆執行猶予中の死刑囚である
ペイター『ルネサンス』

僕らは皆ペエタアの言ったように確かに『いずれも皆執行猶予中の死刑囚である』
という風に、芥川龍之介『文芸的な、余りに文芸的なR』に引用されています。

寺山修司

昭和十年十二月十日に
ぼくは不完全な死体として生まれ
何十年かかゝって
完全な死体となるのである
寺山修司『懐かしのわが家』

執行猶予中の死刑囚」と似たニュアンスがありますが、「死ぬことによって完全になる」といっている分、こちらの方が芸術的な感じがします(しかし虚無度としては「執行猶予中の死刑囚」の方が高いかもしれません)。


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坂口安吾

「あら、おかしいね。なんでもキリがないものよ。毎日毎日ごはんを食べて、キリがないじゃないか。毎日毎日ねむって、キリがないじゃないか」
坂口安吾『桜の森の満開の下』


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川端康成

「人間は何千年もかかって人間と自然界の万物とをいろんな意味ではっきり区別しようとして来たのでございますわ。そんな一人よがりが、今になってこの人生をこんな空虚に感じさせるんじゃないかと思いますの」
川端康成『香の樹』

 

北野武

あんまり死ぬのこわくなると、死にたくなっちゃうんだよ
北野武監督『ソナチネ』

北野武監督、映画『ソナチネ』の台詞です。


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ユルグ・ブットゲライト

人生は幻想であり無意味なものだと認めよ
ユルグ・ブットゲライト監督『死の王』

生など時代遅れだ
ユルグ・ブットゲライト監督『死の王』

こちらはドイツの映画、ユルグ・ブットゲライト監督『死の王』に出てくる言葉です。


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稲垣足穂

彼ら(同性愛者)は子孫を認めないペシミストであるのかもしれない。しかし(中略)「目的が達せられた以上、子供など何になる!」
稲垣足穂『少年愛の美学』

けれども一般としての女性は、彼女らのエネルギーと時間を人間複製のために費いすぎている。
稲垣足穂『少年愛の美学』

……といいつつ稲垣足穂には子供が2人いたのだとか。
しかし浮気はする、奥さんが入院しても見舞いにも行かない、奥さんが亡くなっても「家に小さい子供二人残して先に死んでやかましくてたまらぬ」といっていたそうなので、恐らくロクに面倒は見なかったのでしょう……。


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永井荷風

「しかし人間一生涯の中に一度でも面白いと思うことがあればそれで生れたかいがあるんだ。時節が来たら諦めをつけなくっちゃいけない」
永井荷風『つゆのあとさき』


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永井荷風は2度結婚したものの、2度とも短い期間で離婚。
大正時代のことなので、子供を生み育てるのが当然という世の中だったにもかかわらず、荷風は結婚期間中避妊具をつけ通したのだとか。

永井荷風と稲垣足穂のエピソードは『知識人99人の死に方』という本に載っています


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ショウペンハウエル

この男に言ってやったものだろうか。人生の意慾せらるべきものではないゆえんをお前に教えてくれるというちょうどその点に、人生というものの価値があるのだということを?!
ショウペンハウエル『自殺について』


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E.M.シオラン

そして反出生主義といえば有名なのがシオランです。

生れないこと、それを考えただけで、なんという幸福、なんという自由、なんという広やかな空間に恵まれることか!
シオラン『生誕の災厄』

出生しないということは、議論の余地なく、ありうべき最善の様式だ。
シオラン『生誕の災厄』

自分が少なくとも永遠の存在ではないと知っていながら、なぜ人間は生きてゆけるのだろう。
シオラン『生誕の災厄』

若い人たちに教えてやるべきことはただの一事、生に期待すべきものは何ひとつとしてない、少々譲ってもほとんど何ひとつない、ということに尽きる。
シオラン『生誕の災厄』

人間とは地球の癌だ。
シオラン『生誕の災厄』

人間は生きているとどうしても環境破壊をしてしまうので、人間よりも動物や植物が増えた方が地球に優しい気がします。

また上でも書きましたが、バタイユによると人は動物と違って「性と死について不幸な自覚を抱いている」ということで、やはり死を(危機に直面した時以外には)意識しない動物や植物の方が増えるのにふさわしいといえるのではないでしょうか。


生誕の災厄

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上で紹介した以外にも、

  • 朝から晩まで過去を製造しつづけるとは!
  • 生れたという屈辱を、いまだに消化しかねている

など、暗ァい言葉がギッシリ詰まっている本です。

「生むな」といいたい訳ではありません

何故このような記事を書いたかといえば、子供を生めなかったり、生みたくなかったりという方が、こういう考え方もあると知ることにより、少し気が楽になるかもしれない……また、両親の義務感から生み落とされる不幸な子供を少しでも減らすことができるかもしれない、と考えたからです。

子供を生みたい人は生んだらいいと思う。
しかし子供を生んだ人たちには、子供に生老病死という責め苦を負わせた負い目がある。
彼らには子供に無償の愛を全力で注ぐ義務がある。

少年は残酷な弓を射る』という映画がある。
息子は生まれた時から母親に懐かず母親を困らせる。その原因ははっきりとは描かれていないが、恐らく母親の愛情不足である。
母親は出産前は世界を飛び回る冒険家だった。しかし息子が生まれたことにより家事と育児に縛り付けられるようになった。
母親の言動には「この子さえ出来なければ」という気持ちが透けて見える(出来ちゃった結婚なのだ)。

部屋の壁に世界地図を貼って冒険を夢見る母。幼い息子は母の関心が自分にないことに苛立ち地図をビリビリに破る。
母は息子のその行動にイライラを募らせ、ますます息子をかわいがれない……。

ただ単にご飯を食べさせて、学校に通わせて、やることはやってるでしょ、と義務を果たすだけではなく、子供には無償の愛を注いであげてほしい。たとえ子供が成長して犯罪者やニートになったとしても
その覚悟がある人に子供を生んでほしい。
子供の数が減ったとしても、無償の愛を注がれた幸せな子供の割合が増えた方が、きっと明るい世の中になるはずだ。


少年は残酷な弓を射る

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ギクシャクした関係のまま息子は成長し……物語は衝撃のクライマックスを迎えることに……。

追記

Twitterでこの記事へのつぶやきを頂きました。

詩人ハインリッヒ・ハイネの言葉だそうです。

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